避妊去勢手術で太る?

避妊去勢手術後の犬や猫は太りやすいとよく言われますが、それは事実のようです。AppelとScarlett(2013)はこう述べています。

 

The data for cats suggest that neutering lowers their basal metabolic rate.

猫のデータは、不妊化が基礎代謝率を低下させることを示唆している。

 

Several cross-sectional studies have suggested that dogs and cats neutered at a traditional ages are at higher risk of being overweight than their sexually intact counterparts.

いくつかの横断的研究は、伝統的な年齢(のらぬこ注:伝統的に避妊去勢手術の適齢期とされていた6ヶ月齢以降)で不妊化された犬と猫は、未処置の者よりも肥満のリスクが高いことを示唆している。

 

Evidence from studies in dogs and cats strongly suggest that neutering increases the risk for animals becoming overweight or obese compared to their sexually intact counterparts if intake and exercise levels are not adjusted to maintain body weight.

“Shelter Medicine for Veterinarians and Staff, Second Edition” 653p

犬と猫の研究から導き出された証拠は、体重を維持するために食事と運動が管理されていない場合、不妊化は未処置の者と比較して動物が過体重または肥満になるリスクを高めることを強く示唆している。

 

避妊去勢手術は臓器を除去する手術ですから、臓器が減ることにより基礎代謝が低下することは当然あり得ると思います。従来通りの食事や運動を続けていると、太るのは当たり前です。フードの量を減らすか、低カロリーのフードに切り替える必要があります。避妊去勢後の体重管理を謳ったフードも市販されています。

一方、避妊済みの犬猫における摂食行動の変化も指摘されています。Houptら(1979)は、避妊後の犬は食欲が増加し、自由に餌を食べさせると体重が増加すると報告しています。そしてLeRoux(1983)によると、避妊後の犬も食餌の管理により肥満を防止することができるとしています。Flynnら(1996)は、避妊手術(卵巣子宮摘出術)を受けた猫とそれ以外の開腹手術を受けた猫の肥満率を調査しました。未処置の猫は出された餌を自制しながら少しづつ食べていたのに対し、避妊手術後の猫は出された餌を一気に食べてしまう傾向がありました。活動レベルは両者間で大差なかったことから、避妊された雌猫に自由に餌を与えることは推奨されないとの結論に至りました。

これらの研究結果からいえることは、不妊去勢後の犬猫は食欲が増進しますが、決まった時間に決まった量のフードをあげていれば心配ないということです。そう考えると面倒くさそうに感じるかもしれませんが、食餌の管理は動物飼育の基本中の基本です。それを理由に避妊去勢手術をためらうようなことがあってはなりません。