避妊去勢手術のその他の影響

その他、避妊去勢手術と様々な疾患との関連性について、Houlihan(2017)の文献レビュー※を拾い読みすると、このような記述があります。

 

・避妊された雌犬と比較して、性的未処置の雌は乳腺腫瘍の発生率が3〜7倍高い。

・卵巣摘出術またはOHE(卵巣子宮摘出術)は卵巣腫瘍の予防に有効である。

・OHEは子宮腫瘍の予防に有効である。

・OHEは膣や外陰部の腫瘍の予防に有効である可能性がある。

・性腺摘出術の結果としての交尾行動の減少は、感染性性器腫瘍の発生を大幅に減少させるであろう。

・去勢は精巣腫瘍の予防策として有効である。

・去勢はかつて前立腺癌の予防に有効であるとされていたが、最近の研究では去勢は雄犬の前立腺癌の発症の危険因子とされている。

・性腺摘出術は、泌尿器の移行上皮癌を発症するリスクを高めるようであるが、その原因は特定されていない。

・避妊手術を受けた雌は、性的に未処置の雌と比較して、肥満細胞腫を発症する相対的なリスクが高い可能性があるという証拠がある。

・雌の避妊は、血管腫の発症率を高める可能性がある。

・性腺摘出術は、骨肉腫を発症するリスクを高める一因となる可能性がある。

・雄犬の去勢は、BPH(良性前立腺肥大)、慢性前立腺炎、肛門周囲腺腫、会陰ヘルニアなどのアンドロゲン関連疾患の予防に役立つ。

・雌の場合、OHEの他の利点には、妊娠と分娩に関連する状態(難産など)と同様、子宮蓄膿症、子宮炎、卵巣嚢胞などの生殖器の障害の予防と治療が含まれる。

・全体として、性腺摘出術は寿命の延長に関連しているようである。

 

このレビューで報告されている避妊去勢による影響は、主に卵巣や精巣から分泌される性ホルモンの減少によるものと考えられますが、ホルモンの作用についてはまだまだ解明されていない部分が多く、正直言ってなぜそうなるのかはわからない部分がたくさんあります。また疾病の発現には品種や遺伝、飼養環境など多数の要因が絡み合うため、それが本当に避妊去勢の影響であるとは言い切れない部分があります。

ここまで見てきたとおり、避妊去勢手術にはメリットもデメリットもありますが、「望まれない繁殖によって不幸な命が産まれることを防ぐ」というメリットに勝るものはありません。生殖を人為的に管理すること自体に反対される方もおられるでしょうが、人間と動物が共存していくためには致し方ないと私は思います。

 

※ https://avmajournals.avma.org/doi/full/10.2460/javma.250.10.1155