犬猫の避妊去勢手術の必要性

Houlihan(2017)による文献レビューにおいて、避妊去勢手術が様々な疾患の発生率に影響を与え、また与える可能性があると紹介されたうえで、こう書かれています。

 

The AVMA concludes that dog and cat population control is a primary welfare concern of society.There have been improvements in many geographic areas, but the population of dogs in the United States still substantially exceeds the capacity of society to care and provide homes for all of them. It is estimated that millions of dogs are euthanized at animal shelters in the United States each year, and over half of canine litters in US households are unplanned. Reducing unplanned and indiscriminant breeding through gonadectomy is an effective means of non-lethal population management. Society benefits from elective gonadectomy because animal overpopulation is reduced, which results in fewer animals relinquished to humane organizations. Local ordinances regulating gonadectomy of dogs must also be considered.

(https://avmajournals.avma.org/doi/full/10.2460/javma.250.10.1155)

AVMA(米国獣医師会)は、犬と猫の個体数管理が社会の主要な福祉上の関心事であると結論付けている。多くの地域で改善が見られたが、米国の犬の個体数は、依然として社会がすべての犬の世話をし、家を提供する能力を大幅に上回っている。米国では毎年数百万頭の犬が動物保護施設で安楽殺されていると推定されており、米国の家庭の犬の同腹児の半数以上は計画外である。性腺摘出術によって計画外の無差別な繁殖を減らすことは、非致死的な個体数管理の効果的な手段である。動物の個体過多が減少し、その結果、人道組織に放棄される動物が少なくなるため、社会は選択的性腺摘出術の恩恵を受けている。犬の性腺摘出を義務付ける地方条例も考慮しなければならない。

 

収容動物をひたすら譲渡しても、動物を飼うことができる人口は限られているので、そのうち満杯になってしまいます。そのため米国においても、個体数調整のための安楽殺が行われています。この問題を根本的に解決するには、譲渡数を増やすと同時に受け入れ数を減らすことが不可欠です。そのために重要なのは、以前も述べた「ペットの大量生産・大量消費」の廃止なのですが、これは社会システムの変革と国民の意識の変容が必要ですので、すぐには難しい点があります。今すぐできることは、避妊去勢手術によって不幸な命を増やさないことです。

以前と比べ少なくはなりましたが、日本においても年間約3万頭(令和1)※の犬猫が殺処分されています。これは氷山の一角で、殺処分こそ逃れたものの、動物管理機関や動物愛護団体で「飼い殺し」にされている動物も相当数いると考えられます。

 

※そういえば、未だに「年間30万頭」と叫んでいる、頭が十数年前でフリーズしている酔っぱらいのオッサンに絡まれたことがあります。それとなく諭すと「お前らの広報が悪い」と逆ギレされました…。