「ある自治体では、動愛法第36条第2項に基づき負傷収容した「飼い主の分からない猫」を治療後に元の場所に戻しているそうだが、それはいいのか?」というご質問がありました。結論から言うと「可」です。
環境省課長通知「動物の愛護及び管理に関する法律第44条第3項に基づく愛護動物の遺棄の考え方について(平成26年12月12日 環自総発第1412121号) 」には、こう書かれています。
法令に基づいた業務又は正当な業務として、以下のような目的で愛護動物を生息適地に放つ行為は、遺棄に該当しないものと考えられる。
例:法第36条第2項の規定に基づいて収容した負傷動物等を治療後に放つこと
治療した傷病鳥獣を野生復帰のために放つこと
養殖したキジ・ヤマドリ等を放鳥すること
保護増殖のために希少野生生物を放つこと
「法第36条第2項」とは、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)第36条のことで、そこにはこう書かれています。
第36条 道路、公園、広場その他の公共の場所において、疾病にかかり、若しくは負傷した犬、猫等の動物又は犬、猫等の動物の死体を発見した者は、速やかに、その所有者が判明しているときは所有者に、その所有者が判明しないときは都道府県知事等に通報するように努めなければならない。
2 都道府県等は、前項の規定による通報があつたときは、その動物又はその動物の死体を収容しなければならない。
3 略
通知の記述は刑法(明治40年法律第45号)第35条の「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」に基づくものです。これは「正当行為(法令行為、正当業務行為)」と呼ばれ、形式的に犯罪の構成要件に該当したとしても、違法性が阻却され、罰せられない行為のことです。例えば、飼い主がいるかもしれない負傷猫を収容し、治療後に元の場所に戻す行為は「遺棄」の要件に該当するかもしれませんが、「正当な業務」として罰せられないということです。
ちなみに上記の自治体は、リリースの際に避妊去勢手術を行わないそうです。なぜなら、飼い主がいるかもしれない猫に勝手に生殖能力をなくす手術を行うことは、刑法261条の器物損壊罪に問われるからです。法律って難しい…。