獣医学生によるTNR手術について

平成28年度から山口県からの要請により、山口大学共同獣医学部が地域猫の避妊去勢手術を行うという制度ができました。詳しくは、https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a15300/aigo/chiikineko.html を見ていただくとして、「山口大学共同獣医学部地域猫不妊措置実施要領」には当初、こう書かれていました。

 

学部学生の教育のため、獣医師免許を有する教員の指導の下、検査および手術は本学部学生が実施する。

 

現在はこう改定されています。

 

獣医師免許を有する教員(以下「担当獣医師」という。)が検査及び手術を行い、本学部学生は検査・手術に参加する。

 

おそらく、獣医師法違反疑いの指摘を受けて改訂したものと思われますが、それがどういうことなのか解説したいと思います。

獣医師法(昭和24年法律第186号)第17条で、こう定められています。

 

獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない

 

「飼育動物」とは「一般に人が飼育する動物」(同法第2条の2)のことです。もちろん「業務」でなければ、無免許でも差し支えありません。「業務」の解釈については、似たような規定が設けられている医師法(昭和23年法律第201号)の解釈が参考になります。医師法第17条では「医師でなければ、医業をなしてはならない。」と規定されています。厚生労働省医政局長通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」(平成17年7月26日 医政発第0726005号)でには、こう書かれています。

 

ここにいう「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(「医行為」)を、反復継続する意思をもって行うことであると解している。

 

「山口大学共同獣医学部地域猫不妊措置」が「飼育動物の診療」を反復継続の意思をもって行なう事業であることは明白です。しかもその目的は「山口県が推進する地域猫活動の支援」すなわち大学による地域貢献であり、社会的影響も否めません。そこで獣医師免許を持たない学部生が「検査および手術」を行うことは、獣医師法第17条に違反する可能性があります

では、学生はどの程度手術に「参加」できるのでしょうか。次回はそこについて考えてみたいと思います。