獣医学生が臨床実習の際にどこまで参画できるかは、獣医師法を所管する農林水産省から「獣医学生の臨床実習における獣医師法第17条の適用について」(農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長通知 平成22年6月30日 22消安第1514号)
https://www.maff.go.jp/j/council/zyuizi/keikaku/h2208/pdf/keikaku_h2208d.pdf
という通知が各獣医大学に対して発出されています。そこにはこう書かれています。
臨床実習における獣医学生の診療行為については、その目的・手段・方法が、社会通念からみて相当であり、獣医師の診療行為と同程度の安全性が確保される限度であれば、基本的に違法性はないと解することができるものと考える。
その条件として、
①侵襲性(生体に与える危害・損傷の程度)のそれほど高くない一定のものに限られること
②獣医学教育の一環として、一定の要件を満たす指導教員によるきめ細かな指導・監督・監視の下に行われること
③臨床実習を行わせるに当たって事前に獣医学生の評価を行うこと
④飼育動物の所有者の同意を得て実施すること
①の「侵襲性」についても、基本的な考え方が示されています。
水準1 指導教員の指導・監督の下に実施が許容されるもの
予測される飼育動物への侵襲性が相対的に低い診療行為については、飼育動物の安全の確保が比較的容易であることから、所有者の同意を得て、指導教員の指導・監督(獣医学生15人程度に指導者1人がつき、必要に応じて技術介助を行う)の下で、獣医学生が実施できる。
水準2 指導教員の指導・監視の下に実施が許容されるもの
予測される飼育動物への侵襲性が相対的に中程度の診療行為については、適切に実施されれば飼育動物の安全の確保が可能であることから、所有者の同意を得て、指導教員の指導・監視(獣医学生に必ず指導者が同伴し、必要に応じて獣医学生の診療行為を中止することを指示する)の下で、獣医学生が実施できる。
水準3 原則として指導教員の実施の見学にとどめるもの
予測される飼育動物への侵襲性が相対的に高い診療行為については、飼育動物の安全を確保することは困難であることから、原則として獣医学生は実施できない。
獣医学生が行うことができる診療行為の具体例について細かく例示されていますが、手術に関する部分のみを抜粋すると
となります。これによると手術前の検査は学生に任せてもよく、学生を手術助手として配置したり、麻酔管理に従事させることもできます。たとえ学生が主体的に手術を実施できないとしても、数をこなし全ての学生が何らかの形で参画することができれば、これだけでもかなりの経験は積めると思います。とにかく現場に身を置くことは重要です。
しかしこれはあくまでも例示であって、最終判断は各大学に委ねられています。もし大学がその根拠を示し「避妊去勢手術は侵襲性「中」で、「水準2」に該当するので学生の執刀も可能」と言い張れば、学生による手術は理論上可能ですが、大学がそこまでするかどうか…。