遺失物法は欠陥法である

平成18年に改正された遺失物法の問題点については以前も指摘したとおりですが、もう一度整理しておきます。

遺失物法ではこう規定されています。

 

第四条 拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。ただし、法令の規定によりその所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない。

2 施設において物件(埋蔵物を除く。第三節において同じ。)の拾得をした拾得者(当該施設の施設占有者を除く。)は、前項の規定にかかわらず、速やかに、当該物件を当該施設の施設占有者に交付しなければならない。

3 前二項の規定は、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)第三十五条第三項に規定する犬又は猫に該当する物件について同項の規定による引取りの求めを行った拾得者については、適用しない。

 

簡単に言えば、飼い主不明の犬猫については、拾得者の求めがあれば警察が引き取らなくてもよく、都道府県等に丸投げしてもいいという規定です。この規定の何が問題かというと、簡単に言えば動物の所有権を都道府県等に移す手続きが不明瞭で、自治体が行う処分が結果的に違法になってしまう可能性があるからです。

民法第240条ではこう規定されています。

 

遺失物は、遺失物法(平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。

 

遺失物法第7条の規定に基づき、警察が公告して3か月経過すれば拾得者が所有権を取得し、そして拾得者が所有権を放棄すれば晴れて所有権は都道府県に移ります(同法法第37条第1項)。また動物等保管が困難な物件については2週間が経過すれば、売却(同法第9条)や処分※(同法第10条)が可能です。これが正当な手続きです。

しかし遺失物法による公告の手続きはあくまでも警察が行いますから、動愛法の規定により都道府県等に引き渡された犬猫には適用されません。公告の手続きを踏んでいないのですから、2週間置こうが3か月置こうが所有権は変わりません(後述しますが、都道府県等が所有権を取得するための裏技が存在しますが、それが合法であるか否かは不明瞭です)。つまり本来の飼い主がいる犬猫の所有権はいつまでも飼い主のままで、飼い主の承諾を得ず殺処分することは違法と言わざるを得ません。動愛法第35条第3項の規定により都道府県等に引き渡された犬猫には、遺失物法の一部の規定は適用されませんが、遺失物法そのものが適用されないわけではありません。しかし遺失物法に基づく手続きがすっぽりと抜け落ちた奇妙な規定になっています。何らかの意志を持って、意図的に欠落させたとしか考えられません。

警察が公告のうえ動物を2週間預かり、遺失物法第10条の規定により都道府県等に引き渡すのが理想ですが、負傷動物や幼齢動物など、警察では保管できない動物もいます。また動愛法の規定により、所有者不明の犬猫が直接都道府県等に持ち込まれることもあります。警察が動物を預かれないというのであれば、飼い主がいると思われる犬猫の情報については全て警察が集約し、遺失物法に基づく公告を行うべきではないでしょうか。

 

※ここでいう「処分」とは、動物の場合「これを引き渡すことが適当と認められる者に引き渡し、又は法令の範囲内で同種の野生動物の生息地においてこれを放つことにより行う」(遺失物法施行令(平成19年政令第21号)第4条第1項)とされています。

 

※一部文言の訂正および追記を行いました(2001年1月16日)。