前回、公告後2週間を経過すれば、警察が保管している所有者不明の動物を都道府県等に引き渡すことが可能であると述べました。
ここで注意すべきは、この「引き渡し」はあくまでも占有権の移転であって、これをもって所有権を得られるものではない点です。
ここで遺失物法第7条第4項をよく読んでみてください。
警察署長は、公告をした後においても、物件の遺失者が判明した場合を除き、公告の日から三箇月間(埋蔵物にあっては、六箇月間)は、前二項に定める措置を継続しなければならない。
「処分」すれば公告を終了してもよいとは、どこにも書かれていません。「処分」によって占有権が移転したとしても、所有権は移転しないのです。あくまでも公告は3か月間続き、所有者が名乗り出るのをひたすら待つのです。もし「処分」後に本来の飼い主が名乗り出てきて、求められれば返還しなければなりません。
なので、当然「処分」は殺処分を前提としていません。それどころか、殺処分を前提とする者には引き渡せません。警察庁長官官房長通知「遺失物法等の解釈運用基準について(通達)」(令和元年1 1月2 9日警察庁丙会発第6 0号)第13の2の(2)にはこう書かれています。
動物である物件については、「引き渡すことが適当と認められる者」とは、これを飼養し、又は保管することを希望する者であって、引取り後もこれを適切に取り扱うことができると認められるものいい、具体的には、動愛法第10条第1項の登録を受けて動物取扱業を営む者、動物愛好家、動物愛護団体及び動物園並びに地方公共団体等が考えられる。(原文ママ)
つまり、遺失物法第10条の規定により動物が都道府県等に引き渡されたとしても、殺処分を行うことはできないと解されます。もちろん譲渡は可能ですが、あくまでも占有権の移転ですので、本来の所有者が名乗り出る可能性がある旨を説明し、了承を得ておく必要があります。
公告後3か月経過しても犬猫の所有者が判明しない場合、民法第240条の規定に基づき、拾得者が所有権を取得します。拾得者が所有権を放棄すれば、都道府県が所有権を取得します(遺失物法第37条第1項)。すでに対象の犬猫を譲渡している場合は、都道府県が新しい飼い主に所有権を譲渡しなければなりません。また都道府県が所有者になりますから、殺処分も可能です。所有者がいると推測される犬猫について、遺失物法の規定に基づき殺処分を実施しようとすれば、これだけの手続きが必要なのです。