動愛法に基づく犬猫の「処分」について

所有者がいる可能性がある犬や猫は「逸走した家畜」として遺失物法の「物件」として扱われます(遺失物法第2条第1項)。拾得者はその「物件」を警察署長等に提出する必要があります(同法第4条第1項、第2項)。しかし拾得者が動愛法第35条第3項に基づく引き取りを求めた場合、都道府県等に引き渡すことができます(遺失物法第4条第3項)。つまり遺失物法に基づく手続きはそこでストップし、動愛法に基づく手続きに切り替わります。

「所有者不明」として都道府県等が引き取った犬猫のうち、「逸走した家畜」に該当しない(遺失物法の適用を受けない)野良犬や野良猫等については、「所有の意思をもって占有」すれば所有権を取得することができます(民法第239条第1項)。これを「無主物先占」といいます。

とはいえ、「逸走した家畜」かどうかの判定は困難です。例えば首輪等の明示措置があれば明らかに「逸走した家畜」であることがわかりますし、幼齢の子犬や子猫が「逸走」することは考えにくいので、無主物(=所有者がいない、もしくは所有権が放棄された)と判断されます。しかし多くの場合はグレーゾーンで、本当に所有者がいないとは言い切れません。

所有者がいるかもしれない犬や猫を殺処分するわけにはいきませんし、譲渡も不可能ではありませんが、制約を受けることになります(例えば所有者の承諾を得ずに避妊去勢手術を行うことは、器物損壊罪に問われます)。そこで都道府県等は「公示による無主物先占」という荒業を使います。つまり一定期間周知して、所有者が名乗り出なかった犬猫は無主物とみなし、「無主物先占」の規定により、都道府県等が所有権を取得するわけです。もちろんこの手続きについて動愛法で明文化されているわけではありません。各自治体が独自に条例で定めています。その期間は数日から長くて10日くらいであることが多いようです。収容動物はできるだけ早く処分してしまいたいので、出来るだけ短く設定しているのです。

しかし「逸走した家畜」であれば、遺失物法が適用される「物件」ですから、少なくとも遺失物法で動物の保管期間として定められている2週間の公示を行うべきで、それより短い公示期間を定めた条例は無効で、その条例に基づく行政処分は違法であるという意見があります。これは単なる物権の問題ではなく、生命に関わる案件ですから、国が統一的な指針を示すことが必要ではないでしょうか(例えば、グレーゾーンの犬や猫は2週間公示、明らかに無主物である(遺失物法の対象ではない)犬や猫は3日公示※など)。

とはいえ、公示による無主物先占はあくまでも裏技ですので、グレーゾーンの案件に限定すべきです。明らかに「逸走した家畜」とみなされる犬や猫はすべて、警察が遺失物法の規定に基づき取り扱うべきであることは強調しておきたいと思います。

 

※明らかに無主物であれば公示の必要はありませんが、あらぬ疑いをかけられないためにも、何らかの形で公示はすべきと思います。