飼い主不明の犬や猫の取り扱い

これまでは飼い主不明の犬猫の所有権について、理論的・概念的に見てきました。では、現場ではどう運用されているか、具体的に見ていきましょう。

 

生後90日以降の犬 

鑑札または注射済票が付いていない犬は、狂犬病予防員が抑留しなければなりません(狂犬病予防法第6条第1項)。そのどちらかが付いていて、所有者がわかれば返還できますが、所有者がわからない場合、狂犬病予防員はその旨を市町村長に通知し(同法同条第7項)、市町村はその通知を受け2日間公示します(同法同条第8条)。公示期間満了後1日経過しても所有者がその犬を引き取らない場合は、狂犬病予防員が処分(現在は殺処分とは限らないとされている)できます(同法同条第9項)。つまり公示後3日経過すれば、合法的にその犬を「処分」できるのです。

鑑札も注射済票も付いている迷い犬(めったにお目にかかれませんが)については、動愛法第35条第3項の規定により引き取られますが、所有者が容易に判明するため、遅くとも数日以内に所有者に返還されます。

 

生後90日に満たない子犬 

生後90日に満たない子犬については、狂犬病予防法の規定による登録や予防注射の義務はありませんから、抑留されることはありません。飼い主不明の子犬は動愛法第35条第3項の規定により引き取られます。野犬が存在しない地域で発見された所有者不明の子犬は遺棄された可能性が高いですし、仮に逸走した飼い犬であったとしても、所有者はすぐに見つかります。野犬が常在している地域では、野犬が産んだ子犬を地元住民が捕獲し持ち込むパターンがほとんどです。このように所有者不明で返還不能の子犬のほとんどは無主物であると断定できます。

 

自活できる猫 

動愛法の令和元年改正により、都道府県等は所有者不明の犬猫の引取りを拒否できるようになりました。犬については狂犬病予防法との兼ね合いもあり引取り拒否は難しいのですが、自活可能な猫については一切引取らない自治体がほとんどだと思います。しかし遺失物法の規定により、警察に持ち込まれた猫について求められれば、引取らざるを得ません。ですので、警察と都道府県等が緊密に連携し、原則引取らないという理念を共有しておく必要があります。

 

幼齢の猫 

所有者不明の離乳前の幼齢の子猫については、法的には引取り拒否が可能ですが、動物愛護の観点からほとんどの都道府県等が引取りを行っています。離乳前の子猫が逸走することは考えられないため、無主物とみなされます。

 

負傷収容した犬や猫

負傷の通報を受け犬猫を収容した場合、速やかに必要な処置を行い、所有者が判明すればすぐに返還します。所有者がわからない場合、犬と猫では扱いが異なります。生後90日以降の犬については狂犬病予防法の規定に基づく手続きを行います。無主物と推定される子犬や子猫は、回復すれば譲渡の対象になります。自活できる猫の場合は「公示による無主物先占」の手続きを行う自治体が多いと思いますが、動愛法の「引取り拒否」の規定の趣旨を汲み、回復後に元居た場所に戻す自治体もあります(環境省の通知においても認められている方法です)。