野犬の生態学その1 野犬とは

野犬対策のためには、野犬の生態を知る必要があります。まさか野犬対策の担当者が、野犬の生態について勉強していないなどということはないでしょうが。日本の行政用語では野犬と呼んでいますが、純粋な野生犬ではないため、学術的には「放浪犬」という表記が正しいのかもしれません。Miklosi(2018)によると、特定の飼い主がいない”Free-ranging Dogs”は次の3つに分類されます。

 

Stray Dogs(迷い犬)

人間に完全依存し、行動を部分的に制限された犬。飼い主に遺棄され、地域住民から給餌されている。まだ「真の野良犬」ではなく、多くはシェルターに収容され、飼い主に返還または譲渡される。

 

Village Dogs もしくはPariah Dogs(村犬もしくは野良犬)

人間に一部依存し、自由に行動する犬。食料やねぐらなど人的資源を活用して(人間によって提供されているわけではない)生活している、完全な野良犬。

 

Feral Dogs(ノイヌ)

人間に全く依存しない、野性の犬。東南アジアのシンギング・ドッグやオーストラリアのディンゴなどが該当する。

 

日本の「野犬」に相当するPariah Dogsの生態については、犬の専門家たちによって研究されています。Miklosi(2018)の記述を続けます。

 

Pariah dogs lack the bewildering variability of looks we are familiar with in purebred dogs and their hybrids- indeed, pariah dogs show surprising uniformity across continents. They are small to medium-sized, short-haired dogs with rectangular-proportionate build, and mostly tan or tan-and-white. This suggests that pariah dogs have undergone natural selection that resulted in an economic but tough organism, highly successful in its ecological niche-that is, at the fringe of human society.(「The Dog-A Natural History」(2018)、p36)

Pariah dogsは純血種やその交雑種にみられる外見的な多様性を欠く。確かに、Pariah dogsは大陸ごとの特徴が見いだせない。 それらは、小型から中型で長方形の体格をもつ、ほとんどが黄褐色または黄褐色と白の短毛を持つ犬である。これは、Pariah dogsが自然淘汰を受け、効率的かつタフな生物を生み出し、その生態学的ニッチ、つまり人間社会の周辺で大成功を収めたことを示唆している。

 

世界各地の野犬の外見が似通っているのは、人間社会の周辺で生き延びるための進化が、同じ方向性で同時多発的に起こった結果だというのです。もちろん、日本も例外ではありません。つまり、野犬の生態も万国共通ということです。次回からは、野犬の生態について詳しく見ていきましょう。