狂犬病予防法とは その2(犬の登録と予防注射)

狂犬病予防法第4条では、犬の登録について規定されています。犬の所有者は、犬を取得した日(生後90日以内の犬を取得した場合にあつては、生後90日を経過した日)から30日以内に、市町村長(特別区長を含む)に犬の登録を申請しなければなりません(第1項)。市町村長は、登録の申請があれば、原簿に登録し、その犬の所有者に犬の鑑札を交付しなければなりません(第2項)。犬の所有者は、鑑札をその犬に着けておかなければなりません(第3項)。犬の所有者は、犬が死亡したとき又は犬の所在地等を変更したときは、30日以内に市町村長に届け出なければなりません(第4項)。また犬の所有者が変更した場合には、新所有者は、30日以内に市町村長に届け出なければなりません(第5項)。

第5条では狂犬病予防注射について定められています。犬の所有者(管理者を含む)は、その犬に、狂犬病予防注射を毎年1回受けさせなければなりません(第1項)。市町村長は、予防注射を受けた犬の所有者に注射済票を交付しなければなりません(第2項)。そして犬の所有者は、注射済票をその犬に着けておかなければなりません(第3項)。

ここで議論になるのが、動物管理機関で保管されている犬の取り扱いです。狂犬病予防注射は犬の所有者だけではなく管理者にも課されていますので、所有権の如何によらず、30日以上保管している犬が接種対象であることは疑う余地がありません。注意すべきは、登録義務が「犬の所有者」に課されていることです。一部の自治体は「自治体は所有者ではなく管理者なのだから登録の義務はない。譲渡後に新しい飼い主が登録すればよい」と解釈していますが、例えば動愛法の規定に基づき自治体が飼い主から引き取った犬については、飼い主が所有権を放棄しているのですから、自治体が「無主物先占」により所有者になっているはずです。所有者が変更しているのですから、30日以内に市町村長に届け出なければなりません。保健所の抑留所で成犬を30日以上保管することは通常ありませんし、あってはならないことですので、例えば譲渡のための馴らしや治療等の目的で動物愛護管理センター等に収容されている場合が対象になります。

また生後90日までの子犬は登録の必要はありませんが、90日経過してから30日以内に登録&予防接種が必要です。このケースの方が多いかもしれません。所有者不明の離乳前の子犬(無主物と推定される)の離乳を完了させて譲渡する際に、譲渡先がなかなか見つからず、120日齢(90+30)に達してしまうことは珍しくはありません。

鑑札と注射済票は犬の首輪等に装着する義務がありますが、動愛法の令和元年改正により、マイクロチップを装着し登録した場合においては、そのマイクロチップを鑑札に代えることができるようになります(動愛法第39条の7第2項:令和4年6月1日施行)。しかし注射済票は装着の義務がありますので注意が必要です。