各自治体に「農場における産業動物の適切な方法による殺処分の実施について」(令和3年1月21日環自総発第2101214号、2生畜第1763号)という、環境省と農水省連名の通知が発出されました。簡単に言うと「たとえ産業動物であっても、不適切な致死処分や不適切な飼養管理は動愛法違反の恐れがあるので、改善を指導し、改善の意思がなければ警察への告発を含め厳正に対処するように」ということです。
たしかにこの通知は、これまで手を出しにくかった産業動物の世界にも動愛法が適用されるのだということを明確にしたという点において画期的です。しかしあたかも農水省がアニマルウェルフェアに後ろ向きであるかのような報道が連日流れている中、このタイミングでこんな通知が出てくる(ここで引き合いに出されている和歌山の鶏大量死事件もずいぶん前の話です)ことに何らかの意図を感じるのは私だけではないはずです。
それはさておき、この通知はなかなか読みにくいのですが、整理しながら読んでみたいと思います。
動物の殺処分についての一般事項についての念押し
この通知は「動物の殺処分に関する指針」(平成7年7月4日総理府告示第40号)のおさらいから始まります。ここでは、「動物を殺処分しなければならない場合」は、「化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法」(=安楽殺)によるほか、「社会的に容認されている通常の方法によること」が規定されています。
畜産動物の不適切な取り扱いの実例
今般、畜産関係者による「首吊りにより時間をかけて豚を窒息死させる行為」や「適切な治療や殺処分を行わずに放置することにより鶏に餓死や衰弱死を招く行為」についての情報を環境省が確認しました。
動愛法における虐待等の禁止
動愛法では「動物のみだりな殺傷や暴行等」が禁止されています。そして「その具体的判断は、行為の目的、手段、態様等とその行為による動物の苦痛等を総合して、社会通念としての一般人の健全な常識により判別すべき」としています。言い換えると「感覚がマヒした内部の人間の判断ではなく、一般人がそれを見てどう思うかで判断せよ」ということです。
殺処分の適切な実施
やむを得ない場合における畜産動物の殺処分にあたっては、「指針」や「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について」(令和2年3月16日農林水産省生産局畜産部畜産振興課長通知)に基づき、適切に実施しなければなりません。
取締りの強化
虐待にあたるか否かの一律の判断は困難ですが、動物虐待は法的にも道義的にも許されません。そのため、各自治体の動物愛護管理部局はこういった行為を見逃すことなく、畜産部局と連携して必要な指導や措置を行うよう求めています。