狂犬病予防法とは その3(犬の捕獲)

狂犬病予防法第6条では、放浪犬の抑留とその後の処分について規定されています。

 

予防員は、第四条に規定する登録を受けず、若しくは鑑札を着けず、又は第五条に規定する予防注射を受けず、若しくは注射済票を着けていない犬があると認めたときは、これを抑留しなければならない(第1項)

 

飼い犬は、登録と予防注射を受けさせたうえで、鑑札と注射済票の両方が装着されているのがあらまほしき姿です。そうでない犬は抑留の対象になります。たとえそれが飼い犬であったとしてもです。抑留は「予防員が」「しなければならない」ことに注意してください。

犬を抑留するためには、捕獲しなければなりません。そのため「あらかじめ、都道府県知事が指定した捕獲人を使用して、その犬を捕獲することができ」ます(第2項)。もちろん、予防員が自ら捕獲してもかまいません。予防員は捕獲人を「使用」するのであって、予防員が直接捕獲を指示しなければなりません。予防員が捕獲人に「包括的な指示のみを与えて直接指揮をとらぬ」ことは認められません(「狂犬病予防法解釈上の疑義について」昭和29年9月11日衛乳第47号)。

予防員は「捕獲しようとして追跡中の犬がその所有者又はその他の者の土地、建物又は船車内に入つた場合において、これを捕獲するためやむを得ないと認めるときは、合理的に必要と判断される限度において、その場所(人の住居を除く。)に立ち入ることができ」ます(第3項)。「何人も、正当な理由がなく、前項の立入を拒んではならない」(第4項)ですが、「その場所の看守者又はこれに代るべき者が拒んだときは」この限りでなく、また「当該追跡中の犬が人又は家畜をかんだ犬である場合を除き、都道府県知事が特に必要と認めて指定した期間及び区域に限り適用する」(第5項)とされています。簡単に言えば、予防員はその場所の管理者が正当な理由により立入を拒まない限り、立入権を行使できますが、問答無用で立入る権限は与えられていません。また立入権を行使できるのは予防員のみで、捕獲人は立入権を行使できません(「狂犬病予防法解釈上の疑義について」昭和29年9月11日衛乳第47号)。とはいえ、予防員だけで犬を捕獲することはなかなか難しいので、管理者の承諾を得て捕獲員ともども立入ることになるというのが現実です。またたとえ予防員だけであっても、管理者の承諾を得ておかなければトラブルになることもあります(犬の捕獲に対して肯定的な人ばかりではないので)。

法第3条第2項で「予防員は、その事務に従事するときは、その身分を示す証票を携帯し、関係人の求めにより、これを提示しなければならない」と規定されていますが、この規定は捕獲人が犬の捕獲に従事するときにも準用されます(第6項)。