もしさくら猫が持ち込まれたら

動物管理機関にさくら猫(TNR実施済みの証として耳をカットされた猫)が持ち込まれることが時々あります。所有者不明猫として持ち込まれた場合、以前であれば引取らざるを得ませんでしたが、動愛法の令和元年改正によって自活可能な猫は原則引取り拒否できることになりましたので、現在は拾得者に元の場所に戻すようお願いしています。TNR実施済みということは避妊去勢手術が可能な月齢(明らかに自活可能)で、かつ野外生活に耐えうる、しかも特定の飼い主がいないということですから、再リリースは遺棄には当たらないと思います。

問題は負傷の場合です。生命に支障がない切り傷や擦り傷程度ならまだしも、骨折で動けない、重度の感染症で動けないような猫が持ち込まれた場合、動愛法の規定により引取らざるを得ません。収容して治療を施し、回復すれば元の場所にリリースするというのがさくら猫の正式な取り扱いです。問題は負傷の程度が著しく、治癒の見込みがない場合です。

さくら猫は地域猫の可能性がある(つまり、日常的に世話をしている人がいる)ので、うかつに殺処分などできません。たとえけがや病気が重く、苦痛を除去する手段が安楽殺しかないとしても、それを実施することは勇気がいります。なぜなら、「殺処分」と「獣医療としての安楽殺」の違いが理解できない方がまだたくさんいるからです。もし安楽殺した猫が地域猫であったとすれば「みんながかわいがっていた○○ちゃんが殺処分された!」と炎上することは目に見えています。地域猫の管理者に現状を確認していただき、場合によっては安楽殺の可能性があることを丁寧に説明していかねばなりません。その結果、管理者が引き取り最期を看取るのか、動物管理機関に安楽殺を依頼するかを決定してもらいます。

ウチの自治体であれば、負傷猫としてさくら猫が持ち込まれた場合、速やかに地元の地域猫管理団体に連絡を取り、負傷収容された旨を伝えます。もしその団体が管理している地域猫であれば、「引取る」との意思が団体側から示されるはずです。管理者は所有者ではないにしても、自分たちが世話をしている猫ですから、引取って治療してやりたいと思うのが自然です。また負傷の程度が著しく、治癒の見込みがないとしても、自分たちで看取ってやりたいと思うものです。その猫がその団体で地域猫として管理されていない場合(TNR後に放置されている猫もいます)であっても、さくら猫については引取るという団体が多いようです。他の団体が管理している地域猫の可能性もありますし、彼らは基本的に猫を助けたい人たちだからです。

交通事故は仕方がないにしても、地域猫については管理者が日常の健康管理を行っていただき、立ち上がれないほどの重病の発生を防止してほしいと切に願います。