野良猫の安楽殺を検討する場合

International cat careの「ISFM Guidelines on Population Management and Welfare of Unowned Domestic Cats (Felis catus)※」は、基本的に野猫や野良猫はTNR(TNRelではなく)、迷い猫や捨て猫、飼い猫は譲渡を推奨しています。やむを得ない場合は安楽殺も検討するとしていますが、その理由は「長期収容を避けるため」といたってシンプルです。ガイドラインにはこう書かれています。

 

長期収容は不可

保護施設での滞在は、十分な評価、治療等ができる限り、極力短期間であるべきである。猫を長期間ケージに入れておくことや、譲渡施設または「サンクチュアリ」における恒久的な収容は認められない。TNRまたはTNRelを代替手段として検討すべきである。資源や選択肢が限られている状況では、長期収容を避けるために安楽殺を考慮しなければならない場合がある。

 

その理由として「動物福祉上の理由」が挙げられます。施設への収容環境そのものがストレスとなり、動物のQOLが低下することは広く知られているとおりです。また「サンクチュアリ」で終生飼養すればよいという方もいますが、それによる多頭飼育崩壊は米国だけではなく日本でも報告されています。

 

安楽殺を検討する場合

猫が不健康な場合(野猫、路上猫、野良猫) 猫が元の環境(TNR)や適切な代替環境(TNRel)に戻せない場合には、安楽殺を検討する必要がある。適切な環境を見つけるためにあらゆる試みがなされるべきであるが、人間に慣れていない猫を閉じ込めることはserious welfare issues(深刻な福祉上の問題)を引き起こすので、状況によっては健康な猫の安楽殺を検討する必要が生じる可能性がある。

個々の猫の福祉上の理由で、許容できない又は避けられない苦痛がある場合(迷い猫、捨て猫、飼い猫) 適切な飼い主に譲渡するための、あらゆる努力が迅速に行われなければならないが、長期収容が唯一の選択肢である場合には、安楽殺を考慮しなければならないかもしれない。

 

野猫、路上猫、野良猫は、健康状態がTNRやTNRelに耐えられないと判断された場合、安楽殺が検討されます。治療目的で長期収容することも推奨されません。

迷い猫、捨て猫、飼い猫は、長期収容しか選択肢がない場合(つまり、何らかの理由で譲渡できず、TNRやTNRelもできない場合)、安楽殺が検討されます。

 

※Journal of Feline Medicine and Surgery (2013) 15, 811–817