各団体の安楽殺へのスタンス

ICAMの「The welfare basis for euthanasia of dogs and cats and policy development」(犬と猫の安楽殺と方針立案のための福祉基盤)というマニュアルを読んでいるのですが、これがなかなか興味深いのでご紹介します。

ICAM(International Companion Animal Management)とはコンパニオンアニマルの保護組織の国際的な連合体で、その構成団体はWSPA、HSI、IFAW、RSPCA International、WSAVA ※1、ARC※2です。このマニュアルには、それぞれの団体の安楽殺に対するスタンスが書かれているのですが、微妙にニュアンスが違います。

 

WSPA(World Society for the Protection of Animals)「世界動物保護協会」

・動物が予後不良の病気や怪我で苦しんでいる場合や、病気や攻撃的な行動により、人の健康や安全、あるいは他の動物の安全に重大なリスクをもたらす場合には、安楽殺が許容され、必要である。

・個体数管理のために犬や猫を大量に殺処分することは容認されない。

・たとえば譲渡や安全なリリースができない動物や、収容動物の福祉を損なうシェルターの過密状態を回避するために、健康な動物の安楽殺が必要な場合があることを不本意ながら容認している。

 

RSPCA International(the international arm of the Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals)「英国動物虐待防止協会(RSPCA)の国際部門」

譲渡可能な動物の安楽殺がない世界が理想であるが、現在のところ、動物の病気や怪我のため譲渡できない場合、行動上の理由から、あるいは適切な受入れ先がないために、その動物が基本的なニーズを奪われて長期的な苦痛に耐えることになる場合など、状況によっては安楽殺が必要になることを、非常に不本意ながら受け入れている。

 

IFAW(International Fund for Animal Welfare)「国際動物福祉基金」

個体のQOLが容認できないほどに損なわれていることが明らかな場合、あるいは損なわれる可能性が高い場合であって、それを改善したり防止したりすることができない場合には、安楽殺が動物にとって最善の利益となる可能性があることを不本意ながら受け入れている。

 

HSI (Humane Society International) 「米国人道協会(HSUS)の国際部門」

動物の苦痛除去のために安楽殺を実施する場合、その都度の判断をせず、組織が定めた一貫した基準で判断し、かつ可能な限り最も人道的な死を提供することが必要である。

 

※1 WSAVA  (World Small Animals Veterinary Association) 世界小動物獣医師会。1961年設立、カナダに本部を置く。

※2 ARC(Alliance for Rabies Control ) 狂犬病撲滅を目的に、2006年に英国で発足。2007年に米国で発足したGARC(Global Alliance for Rabies Control)と協力関係にある。