「人とペットの災害対策ガイドライン」の「平常時に飼い主が行うべき対策」の3番目の「ペットが行方不明にならないための対策」ですが、これはすなわち所有者明示措置です。所有者明示措置(「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号)で言うところの「所有明示」)の詳細については過去の記事を見ていただくことにして、ここでは「ガイドライン」に書かれている内容についてご紹介します。
「ガイドライン」では、犬・猫ともに「首輪と迷子札」や「マイクロチップ」が推奨されています。猫には、力がかかると外れるタイプの首輪が推奨されていますが(引っかかって首が締まるのを防ぐため)、その場合はマイクロチップの併用が強く推奨されています。当然のことですが、マイクロチップの情報について登録機関※に登録しておかないと、何の役にも立ちません。
迷子札には連絡先だけではなく、動物についての情報を書いておくと役立つかもしれません。そんなにたくさんの情報は記入できないかもしれませんが、こんな情報があれば保護する側は助かります。
犬の場合は狂犬病予防法の規定により、市町村への登録の際に交付された「鑑札」と、狂犬病予防注射実施時に交付された「注射済票」を装着しておく義務があります。このどちらか、または両方が装着されていない犬は狂犬病予防員による「抑留」の対象になりますし、そもそも登録や予防注射の履歴が不明瞭な犬は、避難所での扱いに困ってしまいます。いくら日本国内で狂犬病が発生していないとはいえ、そのあたりをきちんとしていない犬の受け入れについては、他の避難者からの理解が得られません(なんとなく気持ち悪いですし、何より飼い主としての義務を果たしていないわけですから)。
かわいらしい室内小型犬にダサいデザインの鑑札や注射済票をつけたくないという気持ちは分からなくはありませんが、このことに限らず、法律や規則をきちんと守っていないと、いざというときに困るのが世の常ですので、ぜひご検討ください。同時に、鑑札や注射済票のサイズやデザインについても検討が必要だと思います(日本獣医師会は鑑札だけではなく注射済票もマイクロチップに代えようと目論んでいますが、マイクロチップリーダーがなくても第三者が狂犬病予防接種の実施状況を確認できることは、特に災害時には必要だと思いますので、私は反対です)。
※日本においては、現在のところ、AIPO(Animal ID Promotion Organization:動物ID普及推進会議)が登録事務を行っています(事務局は日本獣医師会)。