IFAWの安楽殺決定基準 その1 健康上の理由

ICAMの「The welfare basis for euthanasia of dogs and cats and policy development」(犬と猫の安楽殺と方針立案のための福祉基盤)には、IFAW(国際動物福祉基金)の安楽殺決定基準の例が掲載されています。この基準は「健康」「行動」「不十分な保護」の3部構成になっています。ひとまず「健康」のセクションを見てみます。

※本来は下図のようにフローチャートで示されていますが、ここでは文章にまとめました。

 

動物はその症状で苦しんでいるか 

痛み、沈うつ、食欲不振、不動、無反応、 または痛みや不快感で声を出したり、治らない傷があったりする場合、 動物が苦しんでいると判断されます。

 

予後は不良か 

動物が症状によって苦しんでいる場合、その症状の予後について判断します。予後とは、その動物が病気や怪我から回復し、過度の苦痛を受けずに生きていくことができるかどうかです。例えば、犬や猫が潰れた足を切断しなければならない場合、足の欠損だけが唯一の問題であるならば、その動物は非常に幸せな生活を送ることができ、予後も良好であるといえます。一方、常に痛みがあり、それが解消されない癌の動物は予後不良といえます。動物が苦しんでいて、かつ予後不良の場合は安楽殺が検討されます。

 

その病気が他の動物や人間に脅威を与えるか 

動物が苦しんでいない場合、または苦しんでいても予後不良と判断されなかった場合、その病気が他の動物や人間に感染するおそれがあるかどうかを判断します。

・動物が苦しんでおらず、かつ感染のおそれがなければ、安楽殺が検討される健康上の問題はないとみなされ、「行動」または「不十分な保護」の観点から判断されます。

感染のおそれがある場合、隔離し治療するためのリソースがない場合には安楽殺が検討されます。リソースがあれば隔離し治療します。

 

苦痛除去や治療のリソースがあるか、また苦しみは短く回復後のQOLは良好か

動物が苦しんでいて、かつ感染のおそれがなければ、苦痛を除去し、治療します。そのためのリソースやスキルがない場合、不必要に動物を苦しめることになるため、安楽殺が検討されます。リソースとは例えば、

・診断・治療・管理への知識とスキルに関するスタッフの能力

・熟練したスタッフにケアを任せることができるか

・経済的基盤

・設備や薬剤(X線撮影装置や検査室、ケージや隔離室、手術室や手術器具など)

また、治療のために長期間動物が苦しむことが予想される場合、また治癒後の生活の質(QOL)が低くなることが予想される場合には、安楽殺が検討されます。治療のために動物が苦痛に耐えるべき期間については、苦痛の程度や苦痛除去の効果、また予後によって異なります。治癒後のQOLについては、身体的苦痛だけではなく、精神的苦痛も考慮します。