IFAWの安楽殺決定基準 その2 行動上の理由

ICAMの「The welfare basis for euthanasia of dogs and cats and policy development」(犬と猫の安楽殺と方針立案のための福祉基盤)に記載されている、IFAW(国際動物福祉基金)の安楽殺決定基準のうち、行動上の理由についてご紹介します。

 

動物に問題行動があるか 

問題行動とは、飼い主がその動物に不満を抱く原因となる行動のことです。飼い主によって寛容度が違うため、ある世帯で「問題」とされる行動は、別の世帯では問題にならない場合があります。よって、譲渡により解決する場合もあります。行動に問題がなく、健康にも問題がない場合、次の「不十分な保護」で判断します。

 

問題行動は特定の病気が原因か 

問題行動が特定の病気に起因するもので、治療により軽減できるのであれば、治療を行い再評価します。

 

行動の問題が遺棄や虐待につながる可能性があるか

行動の問題が身体的・精神的福祉の低下につながるか(日常的な不安、自傷行動など)

行動の問題が他の動物や人間、物や建物に危害を与えるか

これらの問題がある場合、飼い主に環境改善の協力を求めたり、場合によってはレスキュー後にリハビリし、飼い主へ返還または譲渡することになります。飼い主の協力が得られず、リハビリのためのリソースもない場合、安楽殺の必要性については次の「不十分な保護」で判断することになります。

これらの問題がない場合、飼い主教育やスキルを持つ飼い主への譲渡によって問題行動の改善を図ります。

 

その他注意点

・行動問題を改善する際には、生活の質(QOL)が重要な考慮事項となります。犬が家の中のものを壊してしまうかもしれないという理由で、1日23.5時間ケージに閉じ込められている場合は犬のQOLは低く、環境改善の必要があります。逃げ出さないように一日中壁につながれている猫は、QOLが低いといえます。吠えないように一日中口輪をつけられている犬は、QOLが低いといえます。1日24時間壁に鎖で繋がれていて、来客時に窒息寸前になるほど吠えるような攻撃的な犬は、QOLが低いといえます。

・行動問題を改善するためには、人道的かつ効果的に問題行動を改善するための方法について、ペットの飼い主が行動療法や訓練についての専門知識を持った人から指導を受けることが基本です。近くにそのような人がいない場合、飼い主は書籍やインターネットなどで自らリソースを見つけ、忍耐強く問題解決に取り組む必要があります。

・動物保護施設やその他動物福祉団体が実施する「しつけ教室」なども、貴重なリソースのひとつです。