IFAWの安楽殺決定基準 その3 不十分な保護

ICAMの「The welfare basis for euthanasia of dogs and cats and policy development」(犬と猫の安楽殺と方針立案のための福祉基盤)に記載されている、IFAW(国際動物福祉基金)の安楽殺決定基準のうち、「不十分な保護」(failure of guardianship)についてご紹介します。「適切な保護」は、許容可能なレベルの健康と幸福(well being)を維持するために必要な個々の動物の生理学的および精神的ニーズを満たすために必要な資源(例:食物、水、隠れ家、健康管理)および社会的相互作用と定義されます。

 

動物は身体的および/または精神的な健康を損なう条件下で生活しているか

動物が「不十分な保護」のもとで生活しているかどうかを判断します。この質問が「はい」であれば、次の質問に進みます。「いいえ」であれば「健康」または「行動」の基準で判断します。

 

動物を安楽殺する健康上または行動上の理由があるか 

動物を再度「健康」または「行動」の基準で判断し、安楽殺が必要かどうかを判断します。該当すればその時点で安楽殺を検討します。該当しない場合は次の質問に進みます。

 

飼い主が飼養環境を改善する可能性があるか、またそれをサポートするためのリソースはあるか 

飼い主が飼養環境を改善する可能性があればそれをサポートし、改善状況について定期的に確認します。飼い主が非協力的な場合は動物をレスキューして、リハビリののち譲渡します。その際にリハビリがうまくいかず、動物が苦しんでいる場合には安楽殺が検討されます。またレスキューやリハビリのためのリソースがない場合にも、安楽殺が検討されます。

 

その他注意

「適切な飼養環境」は、以下の基準を満たす必要があります。

1. 動物を健康に保つための適切な餌と水

2. 十分な広さがあり、雨風をしのぐことができ、清潔で柔らかい寝床を備えた住居

3. 行動管理

・適切な社会環境(例:人間の家族や他の動物)

・十分な運動

・正の強化のみを用いて、行動上の問題を予防または改善するための訓練

・しつけがされていない犬は、その動物の世話や環境に何かが欠けていたり、病気による異常行動などを示している。

4. 身体的にも精神的にも動物を虐待してはならない。叩いたり、傷つけたり、閉じ込めたり、食事や水を与えない、恐怖や不安を与える、不明瞭な理由で罰すること、これらはすべて逆効果であり、虐待である。

5. 動物の健康を維持すること。

・疾病の予防:予防接種、駆虫、適切な栄養、運動、行動管理。

・動物が病気の場合は、適切な獣医療を受けさせること。

・望まぬ繁殖の防止や、特定の疾病や不適切な繁殖行動を予防するため、ペットの避妊去勢手術を推奨する。

 

レスキュー、リハビリ、譲渡のためのリソースには、以下のものがあります。

1. 動物のための一時的な家:シェルターまたは預かりボランティア

2. 病気を適切に治療するための専門知識、時間、費用

3. 行動問題を適切に管理するための専門知識、時間、お金

4. 動物を譲渡し、また新しい家での飼養状況を確認するための人員、時間、費用

 

動物を譲渡する際の、適切な保護者の基準は以下の通りです。

1. 上記の5つの基準を満たすことができること。

2. 動物の避妊去勢手術を強く推奨する。

3. ペットの適正飼養について理解していること。

4. 動物を戦闘/食品/実験に使用しないこと。

5. 適切な保護が提供できない場合は、動物を保護施設に戻すこと。

6. マイクロチップに加え、首輪や迷子札などの所有者明示措置を講じること。

7. 現地の法令や規則を遵守すること。

8. 動物や人間への虐待の犯罪歴があってはならない。

 

状況の確認

飼い主が適切に世話をしてくれると確認されるまで、定期的に状況を再評価してください。再評価は、週2回を2週間、次に週1回、そして月1回、状況が改善されていると認められるまで行う必要があります。状況が悪化し、動物のレスキューを検討する際には、本基準を用いて再判定します。