令和3年2月にオンライン開催された「飼養管理基準の具体化に係る自治体説明会」の中で、環境省から「殺処分の削減に向けた取組の加速」としてこのような説明がありました。
・飼い主責任の徹底による引取り数の削減を引き続き行う
・「できる限り早い段階で譲渡されるための効果的な施策」の推進に向け、多方面な取組を進めるための議論の場を設置
・「多方面な取組」とは例えば、「保護犬猫についての周知を図る効果的な普及啓発手法」「自治体と譲渡団体等のパートナーシップやネットワーク形成のあり方」「一般家庭以外を含め犬猫が多様な活躍の場を得られる方策の検討」などである
・譲渡団体の活動費の確保については、犬猫の譲渡は本来都道府県等の事務であることから、各自治体の取組などをふまえ方策の検討を行い、令和5年5月末までに結論を得る
これらは第58回中央環境審議会動物愛護部会で出された「第3次答申」を踏まえたものです。たしかに入口対策としての「引取り拒否」と出口対策としての「譲渡の推進」をセットで行うことで、殺処分は削減できるかもしれません。飼い主が手放した、家庭動物としての適性がある犬猫が殺処分されているという現実がある以上、ここをゼロにしていくための方策に注力することは確かに重要でしょう。
ちなみに「多様な活躍の場」とは例えばセラピーアニマルや災害救助犬などを想定しているのでしょうが、確かに元飼い犬や飼い猫で、適性があればそういう「活躍の場」もあり得るかもしれません。しかしそういった活動には、飼い犬や飼い猫が飼い主とともに参加すべきと私は考えます。動物が「活躍」する際には常にストレスが付きまといます。特に猫はそういう点においてデリケートです。動物が「活躍」した後には飼い主からの寵愛が最高のごほうびで、それは必須です。譲渡先が見つからなければ「活躍」させればよいというのは短絡的な考え方であると私は考えます。
話を戻しますが、「飼い主責任の徹底による引取り数の削減」を推進することにより、自治体が飼い主から引き取る犬猫の数は激減しています。ウチの自治体は飼い主からの引取りは原則受け付けず、新しい飼い主を探すための支援(仲介)のみを行っています。受け入れているのは「所有者不明」や「負傷」の犬猫で、そのほとんどは野犬や野良猫(およびその子)です。すくなくともウチの自治体において、殺処分を削減するために必要なのは「野犬や野良猫を訓化して家庭動物として譲渡するためのリソース」であり、「離乳前の子猫をケアするためのリソース」であることは明らかです。もっと言えば、そもそも「野犬や野良猫を減らす」「子猫が産まれないようにする」ための入口対策が必要です。環境省が法で定められた引取り拒否以外の「入口対策」について一言も触れないのは、「それは各自治体が考えることであって、国は関与しない」という意思表示であると私は思っています。