TNRについて考える ①そもそもTNRとは何か

TNR(Trap-Neuter-Return)とは何か、知っている人は当然知っているでしょうが、知らない人もいるでしょう。「地域猫活動」なら知っているという人もいるかもしれません。ここでは ①そもそもTNRとは何か  ②TNRと保護活動は何が違うのか ③TNRと地域猫活動は何が違うのか ④TNRや地域猫活動のあるべき姿 について考えていきたいと思います。

まず、そもそもTNRとは何か、米国のTNR推進団体であるAlley Cat Alliesの定義を引用します。

 

In a Trap-Neuter-Return program, community cats are humanely trapped (with box traps), brought to a veterinarian to be spayed or neutered, vaccinated, eartipped (the universal sign that a community cat has been neutered and vaccinated), and then returned to their outdoor home.

(https://www.alleycat.org/our-work/trap-neuter-return/)

 

Trap-Neuter-Returnプログラムでは、野良猫※は箱型の捕獲器で人道的に捕獲され、獣医師のもとで避妊去勢手術、ワクチン接種、耳カット(野良猫が避妊去勢およびワクチン接種されたことを示す一般的な印)が行われ、彼らの野外の住み家に戻します。

 

TNRは野良猫の人道的な個体群管理の方法(humane approach to addressing community cat populations)として、1970年代ころから英国で行われてきました。米国においては1990年にAlley Cat Alliesが設立されて以降、TNRの普及活動を行っています。それ以前は、米国のアニマルシェルターや動物管理機関は猫を捕まえて殺すという方法で野良猫の個体群を管理していました。しかし

 

・野良猫を捕まえて殺すのは非人道的

・野良猫を捕まえても、その後に他の野良猫が流入するため数が減らない(真空効果)

 

という問題点がありました。そこで開発されたのがTNRという手法です。TNRは野良猫を殺す必要がなく、また避妊去勢手術済みの猫にコロニーを管理させることにより他の猫の流入を避けるという効果も期待できます。

TNRが始まって何十年も経ちますので、TNRにも様々な呼び方があります。現在TNRの主流になっているのは、TNR後の猫をボランティアが管理するTNRM(TNR+Monitor)です。日本の「地域猫活動」も、TNRMの一種であるといえます。またTNRの際にワクチン接種を行うことから、あえてTNVRと呼ぶこともあります。その他「TNRel」「SNR」「RTF」「THVR」など、TNRの手法を流用した猫の保護プログラムがありますが、TNRとは趣旨や目的が異なるため、TNRとは区別されています。

 

※community catとは、地域住民が世話をする可能性がある自由生活猫の総称で、必ずしも野良猫(feral cat)とは限らないのですが、「地域の猫」と訳してしまうと「地域猫」と紛らわしいので、あえて「野良猫」と訳しています。