地域猫活動はTNRM※の一形態であり、地域住民の「合意」に基づく地域猫活動として実施するか、またはボランティアによるTNRの「容認」や「協力」に留めるかは、あくまでも地域の自主的な判断であると私は思っています。しかし地方自治体は環境省推奨の「地域猫活動」にこだわり、その定義に押し込めようとします。その理由について、私も地方公務員の端くれなりに考えてみました。
地域猫活動は支援しやすい
TNRには「一部の猫好きによる、猫好きのための活動」というイメージがあることは否めません。そういう「趣味嗜好的」な活動に公的支援を行うことをためらう自治体はやはり多いのです。環境省推奨の「地域猫活動」であれば、支援のための大義もありますし、理解も得られやすいのでしょう。
野良猫問題の丸投げ
自治体の立場から言うと、地域猫活動は「野良猫問題を地域の環境問題にすることによって、地域に丸投げするためのたくらみ」ともいえます。猫による苦情があったとしても「地域の問題なんだから地域で解決してね♪」と言えてしまうわけです。
「協働」「地域づくり」は行政の大好物
地域猫活動は「地域」「ボランティア」「行政」の三者協働によって実施され、活動は地域のコミュニケーションを活性化し、ひいては活力ある地域づくりにつながる…などと言えば、上司も喜んでハンコを押してくれるでしょう。
「地域猫活動」は「地域活動として行われるTNRM」と言い換えることができます。環境省も「TNRは地域猫活動の基本」(「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」p19)であると言っています。
しかし前回も述べたとおり、地域の合意を待ってからTNRを始めたのでは遅すぎるのです。幸いにもそれなりの数の野良猫が生息している地域には、自主的にTNRを行っている個人や団体がかなりの確率で存在しています。そして、もしその地域で地域猫活動を始めるとすれば、そこが実働部隊(または指南役)になるはずです。地元自治会の公認を得ることにより、自主的なTNRが地域猫活動(の一部)に移行するわけです。言い方を変えれば、TNRは地域猫活動の「種」であるともいえます。TNRを積極的に支援することは、結果的に地域猫活動を推進することにつながると私は考えています。
もっと言えば、TNRの推進によって野良猫による苦情が減るのであれば、それが「正式な」地域猫活動である必要もないのです。地域猫活動が実現できれば素晴らしいですが、そこへのハードルは非常に高く、導入には時間がかかります。聞きなれた「地域猫」という言葉をうまく使いながら、実際にはTNRを支援している自治体もありますが、うまいやり方だと思います(「地域猫」という言葉を安易に使うことには弊害もあります。そのことについては後述します)。
※TNRMとは、ASPCA(米国動物虐待防止協会)が推奨しているTNRの手法で、TNR後の猫を監視(monitor)し管理していくことです。日本の「地域猫活動」もTNRMの一種(私は「亜型」と呼んでいます)といえます。