地域猫活動は地域の自主的な活動である
環境省がガイドラインで「地域猫活動」を紹介しながら、各自治体にその推進を要請せず「我関せず」という態度を示すのには、理由があります。
地域猫活動は地域住民の判断により自主的に立ち上げるものでなければなりません。決して行政が強引に推進する性格のものではないのです。こういう活動があることについて情報提供して、それを実施するかどうかは地域に委ねているわけです。
自治体が地域に対して「地域の合意」をゴリ押しすることは、地域社会の圧力により異論を封殺することにつながり、そこから発生した悪い感情が地域の分断を招くおそれがあります。またその感情の矛先が地域の猫たちに及ぶ危険性もあります。
そもそも地域活動に行政が介入して無理矢理推進しても、長続きしないというのが「地方自治あるある」です。熱心な担当者は、いずれ人事異動でいなくなるからです。地域活動が主体的に立ち上がるための「仕掛け」を作ることが地方公務員、特に市町村職員の仕事だと私は考えています。
先行TNRの重要性
現状において野良猫による被害に苦しんでいる人に対して「地域猫活動への合意」を求めるのは無理です。地域猫活動が野良猫による苦情を減らすための活動であることをいくら論理的に説明しようが、感情的に無理です。自治会長の説得により表向き「合意」するかもしれませんが、決して納得したうえで合意しているわけではありません。そういう人が一定数存在することを念頭に置き、地域猫活動はスピード感を持って、目に見える形で実施する必要があります。地域猫活動を推進していくにつれて、野良猫による被害は減っていきますが、ある日を境に全くなくなるという性格のものではありません。野良猫被害者には一定の受忍を求めるわけですから、目に見える結果を出し納得してもらう必要があります。事前にTNRを実施し、野良猫被害者に「被害が減った」という実感を持ってもらうことができれば、地域猫活動への理解を得ることは比較的容易なはずです。先行TNRが地域猫活動の推進につながるというのは、そういうことです。
最後に
地域猫活動は野良猫管理の理想形ではありますが、そこにこだわるとかえって問題解決が遅くなることを最後に強調しておきます。有志によるTNR活動の立ち上げ、その活動に対して地域が「認知・黙認」すること、「受容・容認」すること、そして「協力・支援」すること、その先に地域ぐるみの活動としての地域猫活動があるのです。地域がTNRにどのステージで関わるかは、地域住民による自由意志であるべきです。そして行政は地域猫活動をゴリ押しするのではなく、ステージごとに必要な支援を行うべきです。しつこいようですが、地域猫活動の理念を念頭に置きTNRを実施していくことが、結果的に地域猫活動を推進することになるのです。