TNRと公衆衛生 ②公衆衛生に配慮した猫の管理

TNR後の猫の適切な管理は、公衆衛生の観点からも重要です。

 

給餌と給餌場の管理 

給餌は管理者が責任をもって行います。給餌場は1か所に指定し、清潔に保つ必要があります。給餌が必要であると特定された猫にのみ、十分な量の餌を与えます。餌は猫が30分以内に食べられる量だけ与えてください。30分後に食べ残しをすべて取り除きます。余分な餌や食べ残しは他の猫やネズミなどの他の動物を誘引し、人獣共通感染症のリスクを高めるおそれがあります。給餌場を上げ底にすることにより、他の動物のアクセスを制限することができます。

また決まった時間に給餌することで、どの猫がいるかが特定でき、新参猫を見つけた際に必要な行動(TNRなど)を実行でき、また健康上の懸念やその他の問題を特定できます。

 

ノミの防除 

野良猫のノミを完全に駆除することは困難ですが、公衆衛生上のリスクを軽減するための最大限の努力は必要です。寝床や寝具は、少なくとも年2回、猫に安全な殺虫剤でノミを駆除します。避妊去勢手術の際に、長時間作用型のノミ駆除剤を局所投与することも有効です。ノミ駆除剤を経口投与することもできますが、複数の猫に給餌している場合、投与の際に注意が必要です。

給餌場の清掃を徹底し他の動物の誘因を防ぐことや、猫の適切な健康管理は、結果的にノミの寄生防止にも役立ちます。

 

トイレの管理 

猫の糞尿は苦情の原因になるとともに、人獣共通感染症の感染源になります。よく考えられた場所に配置された屋外のトイレは、猫が特定の場所で排泄するのを促し、苦情の減少と公衆衛生の向上をもたらします。

屋内のトイレと同様、屋外のトイレの糞尿を定期的にすくってください。定期的な清掃により、猫が気持ちよくトイレを利用でき、臭いを軽減し、ハエを寄せ付けません。定期的に猫砂を全て交換してください。

 

飼い猫や迷い猫の管理 

給餌場に来訪した新参猫のうち、人慣れした猫は外飼いの猫や迷い猫の可能性があります。その際には掲示板やSNSなどで本来の飼い主を探す必要があります。体調に問題がなければ、そのような猫への給餌は避けてください。給餌してしまうと、本来の家に帰らなくなる可能性があるからです。感染防止の観点から、飼い猫や迷い猫は速やかに本来の家に戻ることが望ましいです。

 

ペットの管理 

ペットの猫や犬のワクチン接種や駆虫を確実に実施してください。ペットの犬猫は、野外から病原体や寄生虫を持ち帰り、家に持ち込む可能性があるからです。猫の屋内飼育はこのリスクを最小限に抑えるための最も確実な方法ですが、屋内の猫であっても、必要に応じてワクチン接種や駆虫を実施する必要があります。

 

次回からは、TNRの際に気を付けるべき人獣共通感染症についてお話しします。