厚生労働省の「動物由来感染症(ズーノーシス)ハンドブック2021」によると、日本や海外で発生している主な人獣共通感染症のうち、猫において問題になるものとして次が挙げられています。
猫引っかき病、トキソプラズマ症、回虫症、Q熱、パスツレラ症、カプノサイトファーガ感染症、コリネバクテリウム・ウルセランス感染症、皮膚糸状菌症、重症性血小板減少症候群(SFTS)、狂犬病※
特に野良猫はこれらの病気の原因になる病原体の保有率が高いとされ、野良猫とのむやみな触れ合いは推奨されていません。TNR後に適切な健康管理されている猫については病原体の保有率は低いと考えられますが(そのための健康管理ですから)、TNRのために野良猫を捕獲する際や、猫のトイレの清掃などの際には十分に気を付ける必要があります。
人獣共通感染症を防ぐための一般的な注意点を挙げてみます。
・動物との過剰な触れ合いを避ける
・動物と接触した際には、手洗いを励行する
・噛まれたり引っかかれたりしないように注意する
・万が一、噛まれたり引っかかれたりした場合には、傷口を石鹸でよく洗い医療機関を受診する
・動物の健康管理(特に駆虫やノミ・ダニの駆除)を実施する
・動物の糞尿を適切に処理する
このような方は、特に注意する必要があります。
・妊娠している方
・慢性疾患や免疫抑制剤の服用などで免疫機能が低下している方
・乳幼児
・高齢者
少しでも体調が悪いと思ったら、医療機関を受診することをお勧めします。その際には医師に「猫を取り扱った」ことを必ず伝えてください。知人から「高熱とリンパ節の腫れで近所の内科を受診したところ、一般的な抗生物質を処方され一向に回復しない」という相談を受け、総合病院で必ず「猫を取り扱った」と医師に告げるようアドバイスしたら、案の定「猫ひっかき病」と診断され、ウソのように回復したという話もあります。
※狂犬病は日本では発生していませんが、狂犬病常在国、例えば米国では犬よりも猫からの狂犬病の感染が問題になっていて、TNRの際には狂犬病ワクチンの接種が必須とされています。