猫回虫
猫回虫は猫の腸に寄生していて、そこで生まれた卵は糞便とともに外界に出ます。卵は1~数週間かけて成熟し、他の猫の口に入り感染します。犬回虫と異なり、胎盤感染はしないといわれていますが、乳汁を介して母猫から子猫に感染します。
ネズミや小鳥などの小動物が卵を食べてしまっても、その体内では成虫になれないので幼虫のまま待機し、猫に食べられるのを待ちます。人間の体内でも同様で、幼虫のまま体内をさまよい、「内臓幼虫移行症」とよばれる病気を引き起こします。犬回虫のように重篤な症状を示すわけではありませんが、肝臓や肺に入り込み肝炎や肺炎を起こすことがあります。糞便を速やかに取り除くことや駆虫の徹底により予防できます。
猫鉤虫
猫鉤虫は猫の腸に寄生していて、そこで生まれた卵は糞便とともに外界に出ます。卵は暖かく湿った場所だと1~2日後に孵化します。幼虫は土の中で成長し、条件が良好であれば、幼虫はそこで3~4週間生存できます。幼虫は孵化後約1週間で感染性をもち、皮膚に侵入できるようになります。また口の中に入り、そのまま寄生することもあります。また胎盤感染や乳汁感染により、母猫から子猫に感染します。
人間への感染は、鉤虫の幼虫がいる土の上をはだしで歩いたり、座ったりしたときに起こります。幼虫が皮膚に侵入する際に皮膚炎や皮膚爬行症(みみずばれ)を起こします。
糞便を速やかに取り除くことにより予防できますし、鉤虫の卵や幼虫は乾燥や低温に比較的弱いので、乾燥した清潔な環境を整えることも重要です。
外用型駆虫薬
屋外で複数の猫を管理している場合、駆虫薬の経口投与はなかなか難しいので、避妊去勢手術の際に外用型の駆虫薬を滴下するのが一般的です。
おそらく一般的に用いられているのは「レボリューション」(有効成分:セラメクチン)ではないかと思われます。「レボリューション」はノミや耳ダニ、回虫に有効で、海外の文献では鉤虫にも有効とされています。6週齢以降の猫に投与可能です。
「ブロードライン」(有効成分:フィプロニル+(S)-メトプレン+プラジクアンテル+エプリノメクチン)は比較的新しい薬で価格も高めですが、ノミやマダニのほか回虫、鉤虫、条虫(瓜実条虫、猫条虫、多包条虫)に有効で、7週齢以降の猫に投与可能です。
「アドボケート」(有効成分:イミダクロプリド+モキシデクチン)はノミや耳ダニ、回虫のほか鉤虫にも有効で、価格も「レボリューション」と大差ありませんが、9週齢以上かつ体重1kg以上の猫にしか投与できません。「アドボケート」は、非公式ながら猫の毛包虫症や疥癬にも有効とされているので、どちらかといえば皮膚病で保護対象の猫のケアのために常備しておくとよい薬剤といえます。
※いずれも要指示医薬品ですので、使用にあたっては獣医師の処方せん又は指示が必要です。