野犬のTNR

日本においては狂犬病は根絶されましたが、世界の多くの地域では依然公衆衛生上の懸念として存在していて、狂犬病の蔓延防止のため野犬を捕獲し殺処分することによる個体数管理が行われています。一方、野犬の人道的な個体数管理を求める意見もあります。そこで、犬のTNRが一部の国や地域、特にアジアや中南米で試みられています。

Winograd(2015)※1によると、下の地域において犬のTNRが成功しているとされています。

またJackmanとRowan (2007)※2によると、ジャイプル(インド)、アバコ諸島(バハマ)、バリ島(インドネシア)においても犬のTNRが実施され、成功しているとされています。ジャイプルのような大都市の例もありますが、ほとんどは小さな島で実施されています。

犬のTNRはしばしばCNVR(Catch-Neuter-Vaccinate-Return)とも呼ばれます。猫と異なり必ずしも箱罠で捕らえられるわけではない(場合によっては吹き矢等も用います)ことと、狂犬病の蔓延防止が犬のTNRの重要な目的のひとつであり、ワクチン接種が前提であるからです。

 

香港愛護動物協会(SPCA)は、犬のTNRが必要な理由をこう述べています。

 

Feeding of strays continues as there will always be community members who want to help the thin and hungry animals. However, this also contributes to an increase in population and conflict between carers and less sympathetic members within the community.

Members of the community who object, often call the government to remove dogs from the area, which will be achieved using the current "catch and kill" method of removal. However puppies and easy to catch animals are removed first, leaving behind an increasing number of undesexed, hard to catch dogs.

Without a community consensus for a targeted desexing programme like TNR, stray animals and  the related community conflicts they cause will persist.

※https://www.spca.org.hk/en/animal-birth-control/tnr-trap-neuter-return

 

痩せて空腹の犬を助けたいと思っている住民が常にいるため、野良犬への餌やりは続きます。しかしこれはまた、個体数の増加と、地域内の餌やり者と無関心な住民との間の対立の一因となります。

反対する住民は、しばしば政府に犬をその地域から連れ去るよう主張します。現在それは「キャッチアンドキル」で達成されます。しかし、子犬と捕まえやすい犬が最初に取り除かれ、ますます多くの性的未処置の、捕まえにくい犬が残されます。

TNRのような対象を絞った避妊去勢手術プログラムに対する地域の合意がなければ、野良犬とそれらが引き起こす関連する地域内の対立は続くでしょう。

 

香港においても、日本と似たような問題が起こっているわけです。そして犬のTNRの実証実験が、香港で実施されました。

 

※1 https://www.huffpost.com/entry/should-we-tnr-dogs_b_8776944

※2 https://www.spca.org.hk/en/animal-birth-control/tnr-trap-neuter-return/dog-tnr-trial-faq#q16