香港の犬TNR実証実験 その3

2015年から3年間、香港で実施された犬のTNRの結果について、政府の委員会の報告書を見ていきます※。

 

(b) 試行期間中、対象地点の野犬の個体数を年間10%減少させること。→未達成

調査者によると、3年間の実験期間で長洲(Cheung Chau)の対象地点の野犬の数は14%減少し、大棠(Tai Tong)の対象地点では野犬の個体数に有意な変化はなかったと推定されました。 いずれにおいても、野犬の個体数を年間平均10%削減するという目標を達成できませんでした。 

調査者はその原因について、このように推測しています。

 

(a)広大な対象地点を、しかも移動する犬の個体数を正確にカウントすることは難しい。

(b)新しい犬の流入。

(c)実験期間が犬の平均寿命(飼い犬の場合、10~12年以上)よりも短く、また実施者が野犬のケアや治療を行うことにより健康状態が改善し、結果的に自然死する犬の数が減ったと考えられる。 なお長洲で新規の子犬が発見されており、実施者がそれを保護し譲渡しなければ、長洲の犬の数は増えた可能性がある。

 

(c) 試行期間中における野犬に関する苦情数は、地域全体の平均かそれ以下であること→未達成

野犬に関する苦情数は、長洲の対象地点で増加しましたが、大棠の対象地点では減少ました。

地域全体の野犬に関する苦情は、2015年の6060件から2017年には4268件に減少しました(つまり、過去3年間で30%減少)。この傾向は、地域全体での野犬の減少、つまり2015年の2412頭から2017年の1566頭への減少と一致しています(過去3年間で35%の減少)。それと比較すると、大棠の対象地点における苦情数はかなり減っていますが、長洲ではかえって増えています。調査者と実施者によると、長洲の対象地点において、実験開始の初年度に苦情が19件から39件に増加したのは、給餌のために集まった犬が周辺住宅地で目撃されたこと、およびこの実験そのものが周辺住民に注目されていたことによるものであるとされています。一方、大棠の対象地点で苦情件数が減少したことには、一部のTNR犬が健康状態を理由に、実施者によりシェルターで保護されたことが影響している可能性があります。

 

※  ”Outcome of the “Trap-Neuter-Return” Trial Programme for Stray Dogs”,LegCo Panel on Food Safety and Environmental Hygiene(2018)