本当の「殺処分ゼロ」への道

動物愛護団体が飼い主のいない犬猫をあえて自治体に引取らせそれを引き出すことで、まやかしの「殺処分ゼロ」を演出することには、自治体と動物愛護団体の双方にメリットがあります。しかし意地の悪い見方をすると、自分たちの実績作りのために不必要に犬猫を「転がしている」ようにも見えます。

また、どんな形であれ「譲渡してしまえば(自分の手を離れれば)それでいい」「殺されなければそれでいい」という発想は、入口対策への必要性を希薄にさせます。「自治体がいくら引取ろうが、我々の力で殺処分ゼロを達成してみせる!」などと変な気合いを入れられても困るのです。

本当の「殺処分ゼロ」を達成するためには、自治体が引取らなければならない犬猫の絶対数を減らすこと、すなわち入口対策がまず必要です。たとえ引取り数がゼロにならなかったとしても、適切に譲渡や継続飼養が可能な数まで減らすことができれば、真の「殺処分ゼロ」が実現できます。しつこいようですが、まやかしの「殺処分ゼロ」を演出し続けることは入口対策への意識を薄れさせ、かえって問題解決を遅らせます。

地元の動物愛護団体は、まやかしの「殺処分ゼロ」の誘惑から決別し、飼い主のいない犬猫の自治体による引き取り阻止のために活動するという、本来の姿に立ち返るべきです。そこには直接的な保護活動だけではなく、啓発活動やTNRなどの入口対策も入ってくるはずです。本来であれば、入口対策は自治体が行うべき事項です。しかし自治体は日々受け入れている犬猫についていかに「殺処分ゼロ」の体裁を整えるかということに汲々としています。そこには、それほど多数の犬猫が引取られているという現実があります。とても入口対策にまで手が回らないのです。だからといって入口対策をないがしろにして出口の体裁だけを整えるという手法は、いつか破綻します。ここは民間団体が主体的に動き、自治体にサポートを求めていくというのが現実的であると思います。

こうして、やむなく動物愛護団体が引き受けられなかった犬猫を自治体が引取るという形をとれば、自治体への引取り数を減らすことが可能です。引取り数が減少すれば、やみくもに動物愛護団体に犬猫を丸投げするという慣習も変わります。犬猫を怪しげな団体※に譲渡する必要がなくなり、一部の意識の高い動物愛護団体を選んで譲渡することが可能になります。そのためには、自治体が「TNRコーディネーター」や「預かりボランティア」、「ミルクボランティア」などを養成し、意識の高いボランティアを増やしていく努力も必要です。動物福祉を担保しながら自治体への引取り数を減らすことができれば、本当の「殺処分ゼロ」に一歩近づくのではないでしょうか。

動物愛護団体としては「殺処分を待つ犬猫を救った」という実績が得られないということになりますが、本当の「殺処分ゼロ」には代えがたいのではないでしょうか。

 

※失礼な言い方かもしれませんが、アニマルホーダーまがいの自称動物愛護ボランティアや、反社会勢力と見まがうような態度の自称動物愛護ボランティアも存在し、求められればそういう人たちにも犬猫を譲渡せざるを得ない現実があります。