動物輸送のリスク

犬猫の譲渡にあたり、地方より都会の方が需要が高いことは明白ですし、地域によって好みの動物が異なることもあります。アフターフォローの観点からも「地産地消」の譲渡が望ましいと私は考えていますが、自治体同士で動物を移動させ、そこから譲渡することにも、譲渡促進のメリットがあります。

米国においては、譲渡促進を目的にアニマルシェルターやレスキューグループ※1間で動物を輸送することが広く行われています。そのことはASV(シェルター獣医師会)の”Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters(2010)”※2に”Animal Transport”という節が設けられていることからもわかります。

一方、動物の輸送には2つのリスクがあります。感染症とストレスです。「ガイドライン」にはこう書かれています。

 

For many animals, animal transport is a life saving measure, but it also poses risks. Animal transport programs have the potential to spread infectious diseases along animal transport corridors and to new destinations. The stress of transport may increase susceptibility to infection or increase viral shedding. Risk of exposure to infectious disease is increased when animals who originate from multiple sources are transported in the same vehicle. In addition to affecting the individual animals transported, transportation programs may impact other animals at the source and receiving shelters in both positive and negative ways. Therefore, risks and benefits for all animals affected by a transport program must be carefully weighed. Reasonable care and precautions help minimize the risk, and well planned transport programs can be very successful.

多くの動物にとって、動物輸送は命を救う手段であるが、同時にリスクも伴う。動物輸送は、その経路や目的地に感染症を広げる可能性がある。輸送のストレスは、感染症への感受性を高めたり、ウイルスの排出量を増加させる可能性がある。複数の出所から来た動物を同じ車両で輸送すると、感染症のリスクが高まる。動物輸送は、輸送される個々の動物に影響を与えるだけでなく、送り出すシェルターや受け入れ先のシェルターの他の動物にも、良い、または悪い影響を与える可能性がある。したがって、輸送によって影響を受けるすべての動物のリスクと利益を慎重に検討する必要がある。合理的なケアと予防措置があれば、リスクを最小限に抑えることができ、適切に計画された動物輸送は大きな成功を収めることができる。

 

米国では動物輸送の際のリスクを最低限に抑えるために、法的規制や「ガイドライン」が設けられているのです。

 

※1 「レスキューグループ」とは、アニマルシェルターを持たない草の根の「動物愛護団体」と考えてよいでしょう。

※2  https://www.sheltervet.org/assets/docs/shelter-standards-oct2011-wforward.pdf