どの動物を輸送するか

これまで動物を輸送する方法について述べてきましたが、そもそもどのような動物を輸送すべきかという問題が残ります。譲渡促進の目的で動物を輸送する場合、その動物の選定基準は次の2つが考えられます。

 

・輸送に耐えうる年齢や健康状態かどうか

・輸送先で譲渡が可能かどうか

 

輸送はリスクを伴いますから、幼齢や高齢、病気の動物は輸送すべきではありません。しかしその視点だけでは「譲渡促進」という目的は果たせません。「譲渡促進」を目的とするのであれば「最終的に輸送先で譲渡が可能かどうか」という視点が絶対に必要です。過剰に動物を抱えているからといって、よそに送りつければよいというものではありません。これもいくつかの要素に分解することができます。すなわち、

 

・(輸送先の)譲渡適性の問題

・輸送先の管理の問題

・輸送先の譲渡ニーズの問題

 

譲渡適性がある動物を輸送することは大前提です。しかもそれは送り出す側ではなく、受け入れ側の判断基準で判定する必要があります。譲渡適性の判断については、自治体や担当者間で異なる場合があります。せっかく輸送先が決まっても、輸送先の基準で「譲渡適性なし」と判断され殺処分されてしまっては、何をしているかわからなくなります。ですので、輸送に先立ち輸送元と輸送先の自治体同士で細かい情報交換が必要です。まあ、その時点で嘘をつかれてしまう(嘘のつもりがなくても話を「盛って」しまう)こともありますが。

他自治体に引受けを依頼するわけですから、管理に手がかからず譲渡しやすい動物を輸送するのがエチケットであるといえます。私が勤めていた動物愛護管理センターでも他自治体から犬を受け入れたことがありますが、こちらから事前に「人慣れしていること」という受入れ条件を示して、先方も「人慣れしている」というので引受けたにもかかわらず、まったく人慣れしていない犬が輸送されてきました。突き返すわけにもいかないので、半年かけて行動治療と薬物治療を行いました。これには本当に参りました。こういう「だまし討ち」のような行為は自治体間の信頼関係を著しく損ねます。

またFIVキャリアの猫など、譲渡の際に特別な配慮が必要になるような動物も、受入れ先の手間を考えれば、輸送しないことが望ましいといえます。譲渡が比較的難しい動物のケアに集中するために、比較的譲渡が容易な動物を他自治体に輸送し、そこで譲渡してもらうというのが、動物輸送のあらまほしき姿であると私は考えています。