日本における動物輸送

米国では譲渡促進のため、アニマルシェルターから他のシェルターやレスキューグループへの動物の輸送が広く行われています。それはRelocation(移転)と呼ばれ、Adoption(養子縁組=譲渡)とは区別されています※。そしてPetSmart Charities Rescue Waggin 'といった、公的な輸送プログラムが開発され、また動物の輸送に伴う感染症のリスクを低減するための連邦法や州法も整備されています。

日本でも似たようなことが行われていますが、少しニュアンスが異なります。日本において、自治体の動物管理機関から動物愛護団体が動物を「引き出す」行為は「譲渡」の一類型とされます。動物を個人に譲り渡すことも、動物愛護団体に引き渡すことも、どちらも「譲渡」とされているのです。意地の悪い言い方をすれば、自治体としては動物を動物愛護団体に「譲渡」することにより、責任の一切から逃れているのです。この慣行を悪用して、まやかしの「殺処分ゼロ」が演出されていることは、過去に何度も述べたとおりです。

そしてこの慣行は「譲渡」後の動物の取り扱いについての重大な懸念を生じさせます。自治体から動物を引き出す動物愛護団体<そのほとんどは個人または少人数のボランティアなのですが>のほとんどには、自ら動物を抱える余裕はありません。本来であればしばらく保管して健康観察ののちにマッチングを行い譲渡するというのが「適正譲渡」の流れなのですが、多くの場合これは守られていません。自治体から動物を引き出す時点で、譲渡先が決まっていることがほとんどです。

これはどういうことかというと、自治体による譲渡は対面が原則で、当然のことながら遠方に輸送などしていません。それでも遠方から来られる方も多いのですが、特に保健所譲渡の場合は土日には対応しないことが多いため、来ることができない人も多いのです。そこで、地元のボランティアが事前に「ペットのおうち」等のWebサイトやSNSを用いて譲渡先を募集し、自治体から引き出した動物をそのまま希望者に輸送(ほとんどが空輸)するということが行われていて、自治体もそれを黙認しているのです。つまり動物の輸送が事実上野放しになっているのです。

前述のとおり動物の輸送にはリスクを伴うため、そのリスクを軽減するためには様々な配慮が必要です。それを踏まえると、日本においてどれだけ乱暴な動物の輸送が行われているかがお分かりかと思います。そこには「殺さなければそれでいい」という、短絡的な発想が透けて見えます。動物福祉を無視し、感染症の蔓延を助長する安直な輸送は控えるべきですし、動物の輸送が必要であれば自治体間で責任をもって実施すべきです。もしくは動物輸送のスキルを持つことを公的に認定された動物愛護団体が実施すべきです。また怪しげな「団体譲渡」ではなく、「移転」によって自治体が最後まで責任を持つべきです