ワクチン接種と駆虫

自治体が譲渡対象とする動物には、ワクチン接種と駆虫が実施されます。米国ではアニマルシェルター内での感染症発生防止を目的に、受け入れ時もしくは受入れ前にワクチン接種を行いますが、日本では譲渡対象の動物にワクチンを接種することが一般的のようです。

動物を他自治体等に輸送する際には、最低限のワクチン接種と駆虫が必須です。米国獣医師会によると、輸送対象の動物へのワクチン接種は、少なくとも輸送の3~5日前に実施する必要があります※。

 

ワクチン接種 

ワクチンには接種が推奨される「コアワクチン」、場合によっては接種を検討する「ノンコアワクチン」、そして通常は推奨されないワクチンがあります。下表は米国の例ですが、これはあくまでもアニマルシェルターにおける接種の考え方ですので、ペットのオーナーに対してこれを押し付けるものではありません。

一般的に自治体の動物管理機関においては、いわゆる「コアワクチン」が接種されます。ウチの自治体では譲渡対象の動物に下記のワクチンを接種しています。

【犬】

・狂犬病ワクチン

・5種混合ワクチン(犬ジステンパー、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス感染症、犬パルボウイルス感染症、犬パラインフルエンザウイルス感染症)

【猫】

・3種混合ワクチン(猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症)

 

駆虫 

動物管理機関において、寄生虫の駆除は重要です。飼い主のいない犬や猫は寄生虫の保有率が高いですし、それが他の動物や人間に感染するリスクもあります。特に譲渡後に人間に感染することは絶対に避けなければなりません。駆虫の対象となる寄生虫には、回虫などの内部寄生虫とノミやダニなどの外部寄生虫があります。少なくとも公衆衛生上問題になるノミ、ダニ、疥癬、回虫、鉤虫は駆除しておく必要があります。ウチの自治体では、皮膚に滴下することで内部寄生虫にも外部寄生虫にも対応できる製品を基本としていますが、万能ではないので必要に応じ他の薬剤を併用しています。もちろん、下痢などの消化器症状を示す動物については糞便検査を実施し、その寄生虫に効果がある薬剤を投与しています。

なお、米国においては犬を輸送する際には犬糸状虫の予防薬(または治療薬)の投与が必須とされています※。

 

※ https://www.avma.org/sites/default/files/2020-03/AWF-TransportAdoptionBestPractices.pdf