動物輸送の際の隔離

動物を輸送する際に、輸送元のアニマルシェルターが通常の予防処置を実施していれば、見た目健康な動物を到着後に改めて隔離し様子を見る必要はありません。米国動物虐待防止協会(ASPCA)のWebサイトには”Must Shelters Quarantine Animals for Relocation?”と題した記事※が掲載されていて、こう記述されています。

 

Quarantining animals is the process of keeping them physically separated to observe them for signs of illness and prevent the spread of disease. Quarantine is especially important if you are experiencing a disease outbreak. You may be surprised to learn that quarantining dogs and cats before or after relocating them may be unnecessary.

検疫とは、動物を物理的に隔離し、病気の兆候を観察し、病気の蔓延を防ぐことです。検疫は、病気が発生している場合には特に重要です。意外かもしれませんが、犬や猫を移送する前や後に検疫をする必要はないかもしれません。

 

Because the longer an animal stays in a shelter setting, the more likely their health or behavior is to deteriorate, you must balance each animal’s length of stay with their likelihood of getting or spreading disease to other animals. If your organization and your partners follow routine preventive healthcare protocols, routine quarantine of healthy animals is generally unnecessary.

動物がシェルターに長くいればいるほど、健康状態や行動が悪化する可能性が高くなるため、各動物の滞在期間と、他の動物に病気を感染させたり広めたりする可能性のバランスをとる必要があります。組織やパートナーが日常的な予防医療プロトコルに従っていれば、健康な動物の日常的な検疫は通常必要ありません。

 

シェルターへの滞在期間を極力短くするというのがシェルターメディスンの鉄則です。一定期間の隔離が省略できるのであれば、その分滞在期間を短縮できます。しかしそのためには、予防医療の平準化が必要です。現在のところ、日本の自治体では収容動物に対して一定の予防医療が行われていて、それは各担当者の獣医学的一般常識に基づいています。ですので、自治体間で極端に異なる処置は行われていないとは考えられますが、制度的に平準化されているわけではありません。自治体間における動物の移転を促進するのであれば、予防医療の制度的平準化が不可欠です。

その際には一部の自治体で行われている、避妊去勢手術はおろかワクチン接種や駆虫すら実施することなく、譲渡後速やかに動物病院への受診を勧奨する「現状渡し」譲渡のあり方についても再考する必要があります。いくら自治体間の輸送に気を遣っても、未処置の動物を遠距離譲渡してしまったら元の木阿弥です。

 

※ https://www.aspcapro.org/resource/must-shelters-quarantine-animals-relocation