避妊去勢手術の実施責任

動物の輸送は譲渡促進が目的ですから、当然のことながら対象動物にはNBA(譲渡前避妊去勢手術)を実施する必要があります。米国獣医師会の”non-emergency RELOCATION OF DOGS AND CATS FOR ADOPTION WITHIN THE UNITED STATES Best practices”※にはこう書かれています。

 

• Animals in relocation programs should be spayed or neutered, unless medically contraindicated, to ensure they do not further contribute to the problem of unwanted companion animals. This should occur prior to release by the destination organization.

- Depending on the specific circumstances and available resources, spay-neuter may be performed at the source or the destination.

- If spay-neuter is performed at the source, animals must be sufficiently recovered from those procedures before transport. In no case should animals be transported less than 24 hours after any anesthetic or surgical procedure.

・移転対象の動物は、医学的に禁忌でない限り避妊または去勢手術を行い、コンパニオンアニマルの余剰問題にさらに寄与しないようにする必要がある。これは、輸送先で動物がリリースされる前に完了する必要がある。

-特定の状況と利用可能なリソースに応じて、避妊去勢手術は輸送元または輸送先で実行される場合がある。

-避妊去勢手術が輸送元で行われる場合、動物は輸送前にそれらの手順から十分に回復されなければならない。いかなる場合でも、麻酔または外科的処置後24時間以内に動物を輸送してはならない。

 

輸送元のシェルターが避妊去勢手術を実施することが原則ですが、やむを得ない場合は輸送先で実施することもあります。どちらにしても、輸送先でその動物を譲渡する際には、必ず避妊去勢手術が完了されていなければなりません。

日本においては一部の自治体がNBA未実施の動物を動物愛護団体に引き渡す「団体譲渡」という名の輸送を行っていますが、引き受け先に避妊去勢手術を実施する意思も能力もないことを承知のうえで引き渡している現状があります。引き受け団体がNBAを実施してから譲渡しているかどうかの確認も不十分です。「団体譲渡」などというあいまいな用語を用いず、そこで行われている「輸送」または「移転」という事実を認識し、動物輸送に関する公的なガイドラインを制定することが必要なのではないでしょうか。そのことにより一時的に譲渡の効率が低下するかもしれませんが、「譲渡した動物が繁殖してしまう」という最悪の結果を回避するためには致し方ないと思います。

 

※ https://www.avma.org/sites/default/files/2020-03/AWF-TransportAdoptionBestPractices.pdf