TNRの対象となる猫は、健康な野良猫です。健康な野良猫を、避妊去勢手術の後にリターンすることは動物愛護法上の「遺棄」には当たりません。しかしそれ以外の猫を野に放つことは「遺棄」に該当する可能性があります。環境省の「動物の愛護及び管理に関する法律第44条第3項に基づく愛護動物の遺棄の考え方について(平成26年12月12日付け環自総発第1412121号)」によると、「飼養されている愛護動物」や「生命・身体に対する危険を回避できない又は回避する能力が低いと考えられる状態の愛護動物」を「移転又は置き去りにされて場所的に離隔」する行為は「遺棄」であるとしています。
リターンしてはならない猫① 飼い猫
通知にはこう書かれています。
飼養されている愛護動物は、一般的には生存のために人間の保護を必要としていることから、移転又は置き去りにされて場所的に離隔された時点では健康な状態にある愛護動物であっても、離隔された場所の状況に関わらず、その後、飢え、疲労、交通事故等により生命・身体に対する危険に直面するおそれがあると考えられる。
そしてそういう動物を離隔する行為は「遺棄」であるとしています。つまり飼い猫や、飼い猫であったと考えられる迷い猫や捨て猫をリターンする行為は厳密にいうと「遺棄」に該当します。これらの猫はInternational Cat Careの言葉を借りれば「野外生活に向かない猫」ですので、保護して譲渡するというのが法的にも妥当ということになります。なお、純血種など飼い主がいることが濃厚な猫については、拾得物として警察に届けるのが正式な手続きです。
リターンしてはならない猫② 自活できない猫
通知にはこう書かれています。
生命・身体に対する危険を回避できない又は回避する能力が低いと考えられる状態の愛護動物(自由に行動できない状態にある愛護動物、老齢や幼齢の愛護動物、障害や疾病がある愛護動物等)が移転又は置き去りにされて場所的に離隔された場合は、離隔された場所の状況に関わらず、生命・身体に対する危険に直面するおそれがあると考えられる。
そしてそういう動物を離隔する行為は「遺棄」であるとしています。TNR目的で捕獲した猫がこのような状態であった場合、保護の対象になります。もし野外でそういう猫を発見した場合、動物愛護法ではこう規定されています。
第三十六条 道路、公園、広場その他の公共の場所において、疾病にかかり、若しくは負傷した犬、猫等の動物又は犬、猫等の動物の死体を発見した者は、速やかに、その所有者が判明しているときは所有者に、その所有者が判明しないときは都道府県知事等に通報するように努めなければならない。
2 都道府県等は、前項の規定による通報があつたときは、その動物又はその動物の死体を収容しなければならない。(以下略)