英国の動物愛護団体International Cat Care(ICC)は、子猫の頃の社会化に失敗した元飼い猫をInbetweener(中間者)と定義しています。Inbetweenerは人慣れしていない、いわゆる「譲渡不適」の猫で、本来ならばTNRの対象になるのですが、元飼い猫のため生きていくためには人間によるサポートが必要で、野外生活に適応することが難しいという問題があります。
Inbetweenerはその社会化の程度によって、2つのタイプに分類されます※。
Many inbetweeners would do well living a free-roaming lifestyle where they have food and shelter and a person to care for them from a distance. This can be done in many different environments, for example, hotels, stables, farms and even in spacious gardens.
多くのInbetweenerは、食べ物と寝床があり、遠くから世話をしてくれる人がいる、自由に動き回れる生活が適しています。例えば、ホテル、厩舎、農場、広い庭など、様々な環境で生活することができます。
Other inbetweeners need to be near people, even living in their homes, but don’t want the constant contact or focus that is typical of a more normal owner/cat relationship.
一部のInbetweenerは人の近くにいることが必要で、人の家で生活することもできますが、通常の飼い主と猫の関係のように常に触れ合ったり、関心を向けられたりすることを望みません。
後者のInbetweenerについては、理解ある飼い主に譲渡することが可能です。単なる「同居人」として割り切った関係を望む飼い主にとっては、こういう猫もアリでしょう。
問題は前者の猫です。そもそも家庭動物としての適性がない(人間の責任でそうなってしまったのですが)ので譲渡が困難なのですが、かといって避妊去勢手術後に野に放つわけにはいきません。Inbetweenerは人間による庇護が必要のため、野に放つことは遺棄にあたり、違法となるからです。つまりInbetweenerには飼い主が必要で、かつ飼い主による一定の管理が必要なのです。そのためICCは、Inbetweenerに避妊去勢手術やワクチン接種などを施したうえで、農場など広大な敷地内で「放し飼い」にすることを提案しているのです。もちろん猫の屋外飼育は積極的に推奨されることではありませんので、あくまでも敷地内での「放し飼い」が建前です。
日本ではInbetweenerという存在が十分に認知されていないのが現状で、TNR対象となっている「野良猫」のうち一定数はInbetweenerなのかもしれません。給餌やねぐらの提供などが適切に行われていればInbetweenerであっても実務上は問題ないのかもしれませんが、非常にお堅いことを承知で言えば、もしそれが真正のInbetweenerであれば、リターンは遺棄にあたるということについては頭の隅に置いておく必要があります。
※ https://icatcare.org/unowned-cats/cat-friendly-homing/outcome-alternative-lifestyles/