野良猫「引取り拒否規定」から1年 ①「引取り」の本当の目的

動物愛護法の令和元年改正のうち、都道府県等が「所有者の判明しない犬又は猫」の引取りについて、条件付きながら拒否できるという規定が令和2年6月1日から施行され、1年が経過しました。法で定められた「周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれがないと認められる場合」に加え、引取り拒否できるケースについて自治体の裁量で決められるようになりました。そこで多くの自治体はいわゆる「附帯決議第8項」を後ろ盾に「駆除目的の引取り」を拒否できると規定し、法の規定を骨抜きにすることによって「自活可能な所有者不明猫」の引取りを事実上拒否しています。しかし一方、野良猫の引取り拒否は問題の先送りであり、根本解決につながらないという意見もあります。そこで野良猫の「引取り拒否」規定に至った経緯をおさらいしたうえで、「引取り拒否」の是非について考えていきたいと思います※。

 

飼い犬及び飼い猫の引取り拒否規定

かつて犬や猫の引取りは、動物愛護法で都道府県等の義務とされ、引取り依頼があった犬猫については、ほぼ引取られていました。しかし飼い犬や飼い猫については飼い主による終生飼養義務もあることから、九州某市で始まった「説諭による引取り拒否」が全国に広がり、その法的根拠が問題になっていました。

平成24年に動物愛護法が改正(平成25年9月施行)され、飼い犬や飼い猫については条件付きで引取りを拒否することができると明記されました。ようやく、法律が現状に追い付いたわけです。しかし所有者不明の犬猫の引取りについて、引取り拒否規定は設けられませんでした。その理由について、「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律の施行について(平成25年5月10日環自総発第130 5101号)にこう書かれています(赤字著者)。

 

なお、第35条に基づく引取りは、犬及び猫による生活環境の保全上の支障を防止するために義務付けられたものであり、引取り拒否することにより、周辺の生活環境の保全に支障が生じる場合については、引き続き引取りを行うことが求められる。

(中略)

ただし、引取拒否に係る規定は、その所有者から求められた場合に限定されており、第35条第3項に規定する、拾得者等から引取りを求められた場合については、終生飼養の原則に照らして相当の事由がないと認められる場合とは言えないことから、当該規定は適用されない。

 

つまり、

 

・「犬及び猫による生活環境の保全上の支障を防止」することが引取りの目的である。

・飼い犬や飼い猫の引取り拒否は「終生飼養の原則」に基づく。

 

ことから、飼い主不明の犬や猫については引取り拒否せず「周辺の生活環境の保全」の名のもとに引き続き引取りを続けることになったのです。

 

※「所有者の判明しない犬」(生後90日以内の子犬を除く)については、狂犬病予防法の規定に基づく抑留の対象になりますから、ここでは猫についてのみ考えます。