野良猫「引取り拒否」から1年 ②「附帯決議」の解釈

「附帯決議第8項」

動物愛護法の平成24年改正によって、飼い犬や飼い猫の引取り拒否規定が制定されましたが、都道府県等による「所有者の判明しない猫」の引取り義務は残りました。しかしその時の国会審議の中で、このような附帯決議がなされました(赤字著者)。これが有名な「附帯決議第8項」です。

 

八、飼い主のいない猫に不妊去勢手術を施して地域住民の合意の下に管理する地域猫対策は、猫に係る苦情件数の低減及び猫の引取り頭数の減少に効果があることに鑑み、官民挙げて一層の推進を図ること。なお、駆除目的に捕獲された飼い主のいない猫の引取りは動物愛護の観点から原則として認められないが、やむを得ず引き取る際には、猫の所有者又は占有者を確認しつつ関係者の意向も踏まえた上で、引取り後に譲渡の機会が得られるよう最大限努めるよう、各地方自治体を指導すること。

 

附帯決議の解釈

附帯決議に法的拘束力はありませんが、国家の最高議決機関から発出された決議ですから、当然尊重されるべきです。この附帯決議を素直に読めば、3点を国に求めていると読み取れます。

 

①「地域猫対策」(=地域猫活動)の一層の推進を図ること。

②野良猫の駆除目的の引取りは動物愛護の観点から原則として認められないこと。

③やむを得ず引き取る際には、所有者等を確認しつつ、関係者の意向を踏まえること。そして引き取った猫は極力譲渡するよう自治体を指導すること。

 

「周辺の生活環境の保全」を目的とした猫の引取りが事実上「駆除目的の引取り」であることを考えると、「やむを得ず」野良猫を引取ることは②と矛盾するように思われるかもしれません。例外的に、猫がけがや疾病、幼齢などで自活不能な場合や、飼い猫であることが疑われるような場合に引取り拒否してリターンさせることは、遺棄の教唆になってしまいますので、引取らざるを得ないのですが。

しかし環境省は矛盾しているとは考えていないようです。平成 30 年 12 月に中央環境審議会動物愛護部会から示された「動物愛護管理をめぐる主な課題への対応について(論点整理)」には、環境省の見解としてこう示されています(赤字筆者)。

 

・所有者不明の猫の引取りに関する附帯決議8については、法の施行に当たり留意すべき事項であるから、その解釈については、法の規定する所有者不明の犬猫について都道府県等の引取義務を否定するものではなく、「やむを得ず引き取る際には、猫の所有者又は占有者を確認しつつ関係者の意向も踏まえた上で、引取り後に譲渡の機会が得られるよう最大限努める」ことを求める趣旨であり、譲渡の促進を求めるものであると解される。

 

つまり環境省の解釈としては、附帯決議が法解釈を歪めることはあり得ないため、附帯決議の記述は「駆除目的の引取り」を否定するものではなく、「やむを得ず」引取る際の注意点について述べたものであるということです。この記述からもわかるように、環境省は「駆除目的の引取り」は「やむを得ない」と考えているのです※。

 

※平成27年6月17日付け事務連絡「捕獲檻で捕獲された猫への対応について」において、捕獲檻等の罠で捕獲された猫については、捕獲の目的や手段、態様等によっては殺傷や虐待にあたる可能性があることや飼い猫等である可能性に「留意」することとされましたが、引取り義務との整合性の問題もあり、「引取ってはならない」とは書かれていません。

 

自治体による自主的な「引取り拒否」

しかし環境省の意図とは裏腹に、一部の自治体は附帯決議の趣旨を「素直に」読み取り、「自活可能な所有者不明猫」の引取りそのものを拒否しました。その根拠は

 

・財産権の問題:真の野良猫の捕獲は極めて困難であり、素人である住民が捕獲し自治体に持ち込むことができるような猫のほとんどは、人慣れしている猫である。人慣れしている猫は飼い猫の可能性が高く、飼い猫を譲渡や殺処分することは、飼い主の財産権の侵害にあたる。

・動物愛護の観点:そもそも野良猫を捕獲し行政機関に持ち込むこと自体が「駆除目的」である。

 

しかし動物愛護法の条文には「引取らなければならない」と明記されていました。そのため、一部の自治体のこういった行為を「違法行為」と糾弾し、法の適正な執行を求め、自治体に対して抗議する人たちも現れました。また逆に、「自活可能な所有者不明猫」の引取りを行っている自治体に対し、附帯決議を盾に糾弾する人たちも現れました。現場担当者としては「どないせえっちゅうねん」とツッコミを入れたくなる状況が続いていました。