動物を飼い始める「覚悟」

前回、犬猫の殺処分がなくならない遠因が「飼い主教育の貧困(避妊去勢手術への無理解を含む)」であることを述べましたが、最大の問題は安易に犬猫を飼い始めることにあると私は考えています。

一昔前のテレビCMではありませんが、ペットショップでチワワに見つめられて衝動買いしてしまうなどというのはもちろん論外です。人間の世界で、予期せぬ妊娠で子供を授かり、その後親としての自覚を醸成させていったなどという話はいくらでもありますが、ペットを迎え入れることと同列に論じてはいけません。ペットを迎え入れるには、それなりの準備と心構えが必要なのです。もし予期せぬタイミングでペットを迎え入れる機会があったとしても、少しでも不安があれば断る勇気も必要です。

 

飼い主が犬猫の引取りを求める理由は様々です。

環境省パンフレット「捨てず 増やさず 飼うなら一生」よりhttps://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2706f.html

 

飼い犬や飼い猫の引取りを求める人たちの中には、飼い主の病気や死亡といった真にやむを得ないと思われる理由によるケースも少なくはありません。しかしそういったリスクをあらかじめ想定し対策を講じておくことも飼い主としての務めです。厳しいようですが、そこまで考えられないような人には、犬猫を飼い始める資格はありません。飼い主の都合で、飼い犬や飼い猫が路頭に迷うようなことがあってはならないからです。犬猫を飼い始めるということには、かなりの覚悟が必要なのです。

そういう意味においても、安直な「垂れ流し譲渡」は少なくとも自治体譲渡においては決して許されるべきではありません。私は動物愛護管理センターで譲渡に携わっていた頃、犬猫の譲り受けを希望される方に対してこの点だけは何度も念を押して、それでも飼いたいという方にのみ譲渡してきました。安易に犬猫を飼い始めた結果、譲渡した子たちが再び自治体に引取られるようなことがあってはならないからです。慎重な譲渡、そして飼い主教育の重要性については、どれだけ強調してもしすぎることはありません。

そして環境省のパンフレットには触れられていませんが、一番困るのは「経済的理由で飼い続けられない」という理由です。どうしても犬猫を飼い続けることができなくなった場合、今の日本においてはお金で解決することもできます。いわゆる老犬老猫ホームも全国に誕生していますし、相応の金銭的負担でペットを受け入れてくれる動物愛護団体もあります。しかし経済的理由でペットを手放そうとする人がそのような費用を負担するはずもなく、数千円で引き取ってくれる自治体に持ち込むのです。そのような場合、私は安易に引取らず、新たな飼い主を探すための技術支援を行うことにしていますが、最終的には引取らざるを得ないと考えています。ネグレクトに移行するおそれがありますし、「引取り屋」の手に渡るかもしれないからです。その際には説教のうえ、二度と動物を飼わないと約束させます。少し厳しいかもしれませんが、不幸な動物を生み出さないためにも「動物ファースト」の対応をとるべきであると考えています。