保護動物を「絶対に」繁殖させてはならない理由

アニマルシェルターに保護された犬猫は、絶対に繁殖させてはいけません。ASV(シェルター獣医師会)の”Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters”(2010)にもはっきりとこう記述されています。

 

Animal shelters should require that cats and dogs who are adopted into homes be spayed or neutered.

アニマルシェルターは、家庭に譲渡された猫や犬に避妊去勢手術を施すことを義務付けるべきである。

 

そもそもシェルターに保護されるような犬猫は、人間の不始末によってそこに存在させられています。言い方を換えれば、人間が適切に犬猫の個体数を管理していれば、彼らはそこにはいなかったはずなのです。もしくは、飼い犬や飼い猫として温かい家庭の中で暮らしていたはずなのです。そういった犬猫に人道的な処遇を提供するのは「加害者」たる人間の責任といえます。

それと同時に、シェルターに保護される可能性がある犬猫を増やさないことも重要です。せっかく保護して譲渡した動物が繁殖し、その子孫がシェルターに戻ってくるようなことがあれば、それこそ何をやっているのかわからなくなります。目先の動物を救うことも重要ですが、将来的な視点も必要です。

私は何度も言っていますが、本当の「殺処分ゼロ」を実現するためには、「飼い主のいない」犬や猫の数を減らしていくしか方法はありません。「殺処分ゼロ」を達成したなどと寝ぼけたことを言っている自治体もありますが、そんな魔法はありません。決して近道はないのです。保護動物を繁殖させることは、明らかにその方向から逆行しています。

犬猫の譲渡の際には、NBA(譲渡前避妊去勢手術)の完全実施、もしくは譲渡後に確実に避妊去勢手術が実施されるような方策をとるのが必須です。NBAもマッチングもない「垂れ流し譲渡」などもってのほかです。

前述のASVのガイドラインにもこう記述されています。

 

When prompt, pre-placement surgery is not available and other spaying or neutering programs (e.g., vouchers) are implemented, these programs should include an effective method of follow-up to confirm that the surgery has been completed. Allowing shelter animals to breed is unacceptable.

時間の都合で引き渡し前の手術が実施できず、他の避妊去勢手術プログラム(バウチャーなど)が実施されている場合、これらのプログラムには、手術が完了したことを確認するための効果的なフォローアップ方法を含める必要がある。保護動物の繁殖を許可することは容認されない。