妊娠した保護動物の扱い

もし、アニマルシェルターに保護された動物が妊娠していたとしたらどうするかは、非常に悩ましい問題です。Dines(2017)は、以下のような選択肢があるとしています。※1

 

① 避妊(堕胎)手術の実施

Spaying pregnant animals is an acceptable way to handle these cases.

妊娠中の動物に避妊手術を施すことは、このような場合に受け入れられる方法です。

Some facilities choose to spay animals at any point during a pregnancy, while others have a cut-off point later in the pregnancy to utilize fosters.

施設によっては、妊娠中のどの時点でも避妊手術を行うところもあれば、妊娠後期のある時期以降はFoster※2に預けるところもあります。

 

② Foster(預かりボランティア)の元で出産させる

Foster care is a great option for animals that are pregnant and are not going to be spayed. Foster homes can help limit disease exposure, while also allowing the mother and litter a less stressful environment. However, most facilities face issues with having enough foster homes, especially ones available for 6-8 weeks continuously. 

Fosterに預けることは、妊娠していて避妊手術を受けない動物にとって、素晴らしい選択肢です。Fosterに預ければ、病気の感染を抑えることができ、母子にとってもストレスの少ない環境になります。しかし、ほとんどの施設では、十分な数のFosterを確保すること、特に6~8週間継続してFosterを募集することが困難な場合があります。

 

③ 移送する

If you do not have resources to provide for a mother and litter or are concerned about volunteer upset, it is acceptable to provide transfer as an alternative. 

親子を養育するためのリソースがない場合、またはボランティアの動揺が心配な場合は、代替として移送を行うことが認められています。

 

④ 安楽殺

Although euthanasia is an option, it would seem that this would cause equal upset to spaying among volunteers and hopefully one of the above options is available as an alternative.

安楽殺という選択肢もありますが、ボランティアの間で避妊手術と同等の動揺が生じると思われますので、できれば上記のような選択肢が望まれます。

 

※ シェルターでの出産は推奨されない

What we do not advise is keeping a mother in the shelter to give birth. Neonates do not do well in shelter settings because they are naïve to many diseases and these diseases (panleukopenia, parvovirus, etc.) could be devastating for these young animals.

私たちがお勧めしないのは、出産のために母親をシェルターに入れておくことです。新生子はシェルターではうまく生きていけません。なぜなら、新生子は多くの病気に対して脆弱であり、これらの病気(汎白血球減少症、パルボウイルスなど)は、これらの幼若動物に致命的な影響を与える可能性があるからです。

 

しかし私は①の一択であると考えています。保護動物が妊娠していた場合、目の前の胎子を助けたいという気持ちは理解できます。しかし例えば、保護した野良猫が妊娠していたとして、4匹の子猫が産まれたとします。子猫が離乳したのちに母猫を避妊手術し、子猫は8週齢で避妊去勢手術を行い、すぐに譲渡するという最短コースをとったとしても、その時点で保護に必要な多くのリソースを消費しています。またその猫がいなければ、親からはぐれて保護された子猫など、真に譲渡を必要とする猫の譲渡先が確実に4か所(統計的には飼い猫の子猫の生存率は75%といわれているため、3か所かもしれませんが)増えていたわけです。

 

※1 https://www.sheltermedicine.com/library/resources/?r=spaying-pregnant-animals-in-a-shelter-setting

※2 Fosterを直訳すれば「里親」ですが、アニマルシェルターと契約しているいわゆる「預かりボランティア」を指します。