犬猫の避妊去勢は「かわいそう」なのか

「かわいそうだから」というのも、犬猫の避妊去勢手術を行わない理由として、日本人がよく挙げる言葉です。「せっかくこの世に生まれてきたのだから、子供くらいは産ませてやりたい」「生殖能力を奪うのは残酷だ」という感性は、多くの日本人が持っているのではないでしょうか。しかし目の前の動物が「かわいそう」だからといって、避妊去勢手術を行わないことによってさらに「かわいそう」な動物を増やしてしまうことは避けなければなりません。無秩序に犬猫を増やしてしまうと次のような事態が起こりえます。

 

多頭飼育によるケア不足 

多頭飼育自体は悪いことではありませんが、多頭飼育の結果、各動物へのケアが行き届かず、動物の福祉が低下する状況は非常に問題で、これこそ「かわいそう」な状況であるといえます。具体的には

 

・給餌管理の失敗…動物数に見合った量の餌が与えられていない、もしくは量は十分でも一部の動物に行き渡っていない

・獣医療ケアの失敗…動物の不調に気づかない、もしくは気付いたとしても金銭的理由等により獣医療を受けさせない

・ストレス管理の失敗…多頭飼育によるストレスにより、ケンカやいじめ、体調不良などが起こる

 

挙げていけばきりがありませんが、これらのような状況は間違いなく「かわいそう」といえるでしょう。

 

自治体への引取り 

無秩序に増えた犬猫たちの多くは、自治体に引き取られます。以前はそのほとんどが殺処分されていましたが、現時点では殺処分数はかなり減っています。それでも決してゼロではないことを知っておく必要があります。また各自治体が「殺処分ゼロ」を競うようになり、殺処分を回避するために安易な譲渡に走る傾向があります。「殺さなければそれでいい」とばかりに、甘い身辺調査でどんどん譲渡しているのです。いい飼い主に巡り会えればよいですが、おもちゃを買うように安易に犬猫を譲り受ける人や、最初から虐待目的で譲り受けたりといった、ロクでもない人がいることも事実です。また動物愛護団体に丸投げされて、多頭飼育下で「飼い殺し」の目にあっている犬猫もいます。これらの犬猫もやはり「かわいそう」といえるのではないでしょうか。

 

引取られなかったとしても…

自治体に引き取られなかったとしても、野良犬や野良猫として生きていくことはなかなか大変です。飢え、交通事故、凍死、そして虐待…これらのリスクを負いながら野外で生活していかざるを得ない犬猫も「かわいそう」といえるでしょう。そしてそういった犬猫が野外で繁殖して、「かわいそう」な犬猫が再生産されていくという事実にも目を向けなければなりません。

 

「かわいそう」な犬猫を増やさないためにも、避妊去勢手術が必要なのです。