Spay/Neuter Programとは

ペットの犬猫の避妊去勢手術を行う場合、かかりつけの動物病院で実施するのが通常ですし、もちろん米国においてもそうです。しかし米国においては非営利団体や行政機関による”Spay/Neuter Program”というサービスが実施されており、日本においても同様のサービスが広がりつつあります。

Spay/Neuter Programとは何か、米国獣医師会(AVMA)はこう定義しています。

 

Low-cost or no-cost spay/neuter programs are subsidized programs, often run by nonprofit or governmental agencies, designed to reduce pet overpopulation by providing pet sterilization services for owners who otherwise could not afford to have their pet spayed or neutered. Although the surgeries may be performed in higher volume, in mobile clinics, or in MASH-style temporary facilities, AVMA policy states that the standards of practice should conform with the Association of Shelter Veterinarians’ Veterinary Medical Care Guidelines for Spay/Neuter Programs.

低価格または無料の避妊去勢プログラムは、非営利団体や行政機関が運営する補助制度で、ペットの避妊去勢手術を受ける余裕のない飼い主にペットの避妊去勢手術を提供することで、ペットの過剰繁殖を軽減することを目的としています。手術は、より大量に、移動式クリニックやMASH形式の仮設施設で行われることもありますが、AVMAの方針では、診療基準はシェルター獣医師会(ASV)の”Veterinary Medical Care Guidelines for Spay/Neuter Programs”に準拠すべきとしています。

https://www.avma.org/resources-tools/animal-health-and-welfare/elective-spaying-and-neutering-pets

 

※MASH:Mobile Animal Surgical Hospitalsの略。手術のための資材一式を仮設会場に持ち込み、集中的に避妊去勢手術を実施する、いわゆる「出張手術サービス」のこと。

 

つまり、飼い主が手術費用を負担することが難しいペットや、そもそも飼い主がいない犬猫などの避妊去勢手術を非営利で行うのがSpay/Neuter Programといえます。プログラムによっても異なりますが、Spay/Neuter Programは通常、HQHVSN(High-quality, high-volume spay-neuter)、すなわち「高品質かつ大量の避妊去勢手術」という考え方で行われます。Spay/Neuter Programの目的は犬猫の過剰繁殖防止で、しかも非営利の活動ですから、必然的に手術数をこなすことが求められます。また場合によってはMASHのように、仮設の手術室で手術を行うこともあります。とはいえ、健康な動物にメスを入れる手術をいい加減に行ってよいわけがありません。そのためASVはSpay/Neuter Programにおいて順守すべき最低基準をガイドラインで定めていて、AVMAも所属獣医師にその遵守を求めているわけです。このガイドラインはHQHVSNを想定していますが、そうではない避妊去勢手術にも適用可能な最低基準であるとASVは言っています。