アニマルシェルターにおけるエンリッチメント⑤ エンリッチメントのヒント

SAWA(2017)は、エンリッチメントを成功させるための一般的なヒントとして4点を挙げています※。 

 

Provide variety(多様性を持たせる)

Offer a range of items (i.e. toys) and experiences (i.e. types of music, different scents, etc.) and rotate their use to keep things interesting and reduce habituation.

さまざまなアイテム(例:おもちゃ)や体験(例:音楽の種類、異なる香りなど)を提供し、それらを交互に使用することで、物事に興味を持たせ、飽きさせないようにします。

 

Beware of overstimulation(過剰な刺激に注意する )

While stimulating the animal mentally and physically is the goal of enrichment, overstimulation can increase stress levels (i.e. playing music at too loud of a volume or for the entire day).

動物の心身を刺激することがエンリッチメントの目的ですが、過剰な刺激はストレスレベルを高める可能性があります(例:大きすぎる音量や一日中、音楽を流したりすること)。

 

Consider individual preferences(個々の好みを考慮する) 

Consider individual preferences and keep in mind that preferences might change. If an animal seems disinterested in a particular enrichment item, try something different. Spend some time identifying things that the animal seems to truly find motivating or reinforcing.

個々の好みを考慮し、好みが変わる可能性があることを念頭に置いてください。動物が特定のアイテムに興味を示さないようであれば、別のものを試してみてください。その動物が本当に興味を持ったり、強化されたりするようなものを見極めるのに時間をかけてください。

 

Keep it positive(常に正の強化を用いる) 

If training is used as an enrichment tool, all training methods used, to comply with this best practice, must be based in positive reinforcement. Punishment, force or interactions that are stressful for animals are not an acceptable component of an enrichment program.

トレーニングをエンリッチメントのツールとして使用する場合、このベストプラクティスに準拠するために使用するすべてのトレーニング方法は、正の強化に基づいていなければなりません。動物にストレスを与えるような罰や暴力、相互作用はエンリッチメントプログラムの構成要素として認められません。

 

「正の強化」(positive reinforcement)とは、動物が「好ましい」行動を発現した際に報酬を与え、「好ましい」行動の発現頻度を増加させようとする強化の手法です。逆に「好ましくない」行動を発現した際に叱る、暴力などの罰を与え、「好ましくない行動」の発現頻度を減少させようとするのが「正の罰」(positive punishment)で、現代の学習理論では極力避けるべきとされていますし、体罰などもってのほかです。

 

※ ”Animal Enrichment Best Practice” SAWA(2017)