子犬・子猫の避妊去勢手術

避妊去勢手術を行わない理由として、「まだ子犬(子猫)だから」というのもよく聞きます。以前も述べたように、米国のアニマルシェルターでは、子猫のNBA(譲渡前避妊去勢手術)は通常8週齢以降または体重2ポンド(900g)以上で行われていて、早期避妊去勢手術による問題は特に指摘されていません。それどころか、もっと早くてもよいという考え方が主流になりつつあります。Holck(2018)によると※、

 

There is currently no research to suggest that spaying healthy kittens at 6 weeks old poses a greater risk than spaying kittens at 8 weeks old. There are actually many animal shelters who routinely spay and neuter healthy kittens safely at 1.5 pounds. There is no reported increase in anesthetic or surgical complications in 6 week old kittens versus 8 week old kittens. Research shows that pediatric spay and neutering is safe in kittens, and the Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs as well as the American Association of Feline Practitioners (AAFP) support the spaying and neutering of animals as young as 6 weeks of age.

現在のところ、健康な子猫を6週齢で避妊することが、8週齢で避妊することよりもリスクが高いことを示唆する研究結果はありません。実際に多くのアニマルシェルターでは、健康な子猫を1.5ポンド(675g)で安全に避妊去勢手術を行っています。6週齢の子猫と8週齢の子猫を比較して、麻酔や手術の合併症が増えるという報告はありません。子猫の場合、幼齢の避妊去勢手術は安全であるという研究結果が出ており、シェルター獣医師会のガイドラインや米国猫臨床家協会(AAFP)は、6週齢の動物の避妊去勢手術を支持しています。

 

Holckはさらに、6週齢の避妊去勢手術がシェルターにもたらすメリットとして、「収容期間の短縮によるシェルターのリソース確保」や「社会化期中(2~7週齢)の譲渡が可能」を挙げています。

また、子猫の方が生殖器が未発達のため手術が比較的簡単で、出血も少なく、回復も早いというメリットがあります。それでも一般の動物病院が早期避妊去勢手術をためらうのは、子犬や子猫の麻酔管理に不安があるからです。実際に米国においても、一般の動物病院においてはワクチン接種終了後の4~5か月齢に手術を行うのが一般的です。しかしそれでは特に猫の場合、初回発情が来てしまうおそれがあります。

早期避妊去勢手術を妨げるもう一つの理由は、飼い主の自覚不足です。ペットが出産してしまったという事実に直面して、あわてて避妊去勢手術を行ったなどという話はしょっちゅう耳にします。「初回発情までに避妊去勢手術」という飼い主教育も必要です。

 

※ https://www.sheltermedicine.com/library/resources/?r=what-is-the-ideal-age-to-spay-neuter-adopt-shelter-kittens