アニマルシェルターにおいては、譲渡促進を目的に犬の基本的なしつけや子犬・子猫の社会化が行われていますが、これらもエンリッチメントの一環とされています。ASVの「ガイドライン」から見ていきます※。
しつけや訓練
しつけや訓練も、人間との交流を通じたエンリッチメントの手法になります。特にオペラント条件付けを用いた訓練は、動物に認知的刺激を与えます。
Training programs for dogs and cats (e.g., to condition or teach basic obedience commands or tricks) also serve as an important source of stimulation and social contact. For dogs, such training has been shown to increase chances for re-homing. Training methods must be based primarily on positive reinforcement in accordance with current professional guidelines .
犬や猫の訓練(例えば、基本的なしつけや芸を教えたりする)は、刺激や社会的接触の重要な源にもなります。犬の場合、このような訓練を行うことで、譲渡の機会が増えることがわかっています。訓練の方法は、最新の専門的なガイドラインに沿って、主に正の強化に基づいたものでなければなりません。
「正の強化」(positive reinforcement)とは、動物が「好ましい」行動を発現した際に報酬を与え、「好ましい」行動の発現頻度を増加させようとするオペラント条件付けの手法です。
子犬や子猫の社会化
社会化期の子犬や子猫を収容している場合、適切な社会化を行うことが重要です。
For puppies and kittens less than 4 months old, proper socialization is essential for normal behavioral development. Without daily handling and positive exposure to a variety of novel stimuli, animals may develop chronic fear and anxiety or suffer from the inability to adjust normally to their environments. For these reasons, a high priority must be placed on ensuring proper socialization of young puppies and kittens. This may be best accomplished outside of the shelter (e.g., in foster care) . For puppies and kittens housed in a shelter, socialization must be balanced with infectious disease control. Socialization should be provided by workers or volunteers wearing clean protective clothing in an environment that can be fully disinfected between uses.
生後4ヶ月未満の子犬や子猫の場合、正常な行動の発達には適切な社会化が不可欠です。日常的に接し、さまざまな新しい刺激に積極的にさらさなければ、動物は慢性的な恐怖や不安を感じたり、環境に正常に適応できなくなったりする可能性があります。このような理由から、幼い子犬や子猫には適切な社会化を行うことを最優先にしなければなりません。これはシェルターの外(預かりボランティアなど)で行うのが最も効果的であると考えられます。シェルターに収容されている子犬や子猫の場合、社会化と感染症対策のバランスをとる必要があります。社会化は、使用後に完全に消毒できる環境で、清潔な防護服を着たスタッフやボランティアが行うべきです。
シェルターメディスンの考え方では、子犬や子猫はシェルターに入れるべきではなくFoster(預かりボランティア)に預けるべきとされています※が、やむを得ない場合は感染症予防に配慮した形で社会化を行います。
※1 ”Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters” ASV(2010)
※2 SAWA(2017)の”Animal Enrichment Best Practice” によると、譲渡するには若すぎる(避妊去勢手術ができない)8週齢以内の子犬や子猫はFosterに預け社会化を行うべきとされています。