ASVの”Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters”(2010)の” Enrichment and Socialization”の項には、アニマルシェルターにおける長期滞在動物への配慮について記述されています。
長期収容中の動物にストレスに起因すると疑われる兆候が見られた場合、速やかに処置を講じる必要があります。また繁殖ストレスを未然に防ぐため、避妊去勢手術は必須です。
行動治療などの処置
Any animal that is observed to be experiencing mental suffering, distress or behavioral deterioration must be assessed and appropriately treated in a timely manner or humanely euthanized. Just as a severe or rapid decline in an animal’s physical health constitutes an emergency situation and requires an urgent response, so do such changes in the behavioral or mental health of an animal.
精神的な苦痛や苦悩、行動の悪化が見られる動物は、評価を受け、適時適切な処置を受けるか、人道的に安楽殺しなければなりません。動物の身体的な健康状態が著しくまたは急激に悪化した場合、緊急事態とみなされ緊急処置が必要となるのと同様に、動物の行動や精神的な健康状態にもそのような変化が見られます。
避妊去勢手術の実施
Reproductive stress from estrous cycling and sex drive can decrease appetite, increase urine spraying, marking and fighting, and profoundly increase social and emotional stress. For these reasons, animals who are housed long-term should be spayed or neutered as the rapid decline in spraying, marking, and fighting and the elimination of heat behavior and pregnancy will greatly mitigate animal stress (Hart 1973, 1997; Johnston 1991). This also serves to facilitate group housing and participation in supervised playgroups for exercise and social enrichment.
発情周期や性欲による繁殖ストレスは、食欲を減退させ、尿スプレーやマーキング、ケンカを増加させ、社会的・精神的ストレスを深く増大させます。これらの理由から、長期的に飼育される動物には避妊去勢手術を施すべきです。尿スプレー、マーキング、ケンカが急速に減少し、発情行動や妊娠がなくなることで、動物のストレスが大幅に軽減されるからです。このことは、グループでの飼育を容易にし、運動と社会的エンリッチメントのために管理されたプレイグループに参加することにもつながります。
まとめ
ここまでエンリッチメントについて長々と述べてきましたが、よくよく考えてみますと、例えば私たちが独房に閉じ込められ、食料と水だけ与えられていたとしたらどうでしょう。おそらくそんな状況には耐えられないのではないでしょうか。「アニマルシェルターをたくさん作り、飼い主のいない犬猫をそこで飼い続ければいい」と簡単に言う人もいますが、単に「殺さなければそれでいい」わけではありません。
そして、どんなに適切なエンリッチメントが行われていたとしても、アニマルシェルターは「ずっとのおうち」の代わりにはなりませんし、してはならないのだということを念押ししておきたいと思います。